実は奥が深い!海苔の基礎知識と起源や流通の歴史
焼き海苔や青のりなど普段何気なく食べている海苔ですが、具体的にどんな食品なのかということを知っている方は意外と少ないのではないでしょうか。知らなくても美味しく食べることはできますが、知っていると用途別の使い方もわかるのでより美味しく食べられるかもしれません。
海苔は日本の広い地域で生産されていますが、海藻を原料としているため製品ごとにその土地の磯の風味を楽しむことができます。風味だけでなく産地による質感の違いなどもあり、海苔は奥が深い食品です。
今回はそんな海苔の基礎知識と起源や流通の歴史についてご紹介していきます。
スポンサーリンク
海苔とは?
海苔とは、紅藻や緑藻などの藻類を原料とした食品です。川に生息する藻類の中にも原料となる種は存在しますが生息数が少ないため、現代ではほとんどの海苔が海藻を原料としています。
おにぎりなどに使用される最も一般的な海苔は、海藻を紙のように漉き板状に乾燥させた後に焼き上げたもので、「焼き海苔」と言います。他にも生海苔、乾燥海苔など加工方法の違いによりいくつかの種類があります。
海苔は様々な食べ方が楽しめる食品で、定番のおにぎり以外にも海苔巻きや軍艦巻きなど海苔を使用した寿司も愛されてきました。他にも餅に醤油をつけて海苔を巻いた磯辺餅や海苔を巻いた煎餅などもあり、食事だけでなくお菓子にも使われています。
海苔の加工方法の違い
海苔には加工方法の違いによっていくつかの種類があると述べましたが、その種類について簡単に説明いたします。代表的な海苔の種類とその加工方法をまとめると以下のようになります。
- 生海苔:乾燥させていない生の状態の海苔
- 乾燥海苔:生海苔を紙のように漉いて板状に乾燥させたもの
- 焼き海苔:乾燥海苔を火であぶり焼き上げたもの
- 味付け海苔:焼き海苔に砂糖、醤油などで味付けをした海苔
- 青のり:原料となる海藻を乾燥させた後に粉砕したもの
生海苔
生海苔は、海苔の収穫時期に流通する貴重品です。とろりとした海苔は磯の香りが感じられ、そのまま食べたりポン酢や醤油を少量かけて楽しまれています。また、海苔の佃煮を作ると豊かな磯の風味が楽しめるので、海苔の佃煮を作る際におすすめです。
乾燥海苔
乾燥海苔は、一般家庭で使用されることは少ないものの、寿司店では巻き寿司に使用されることもあり、風味の良さが特徴です。海苔は焼くことで風味が増しますが、乾燥海苔は使用直前に自分で焼くので手間をかけても風味の良い海苔を使用したい方におすすめです。
焼き海苔
現代では最も普及しているのが焼き海苔です。パリッとした質感とふわりと香る磯の風味がよく、おにぎりや餅など様々な食べ方と相性がよいとされています。昔は乾燥海苔が主流でしたが、炙らずに使える便利さから今は焼き海苔が主流となりました。
味付け海苔
味付け海苔は、旅館などで朝食として出されることも多く、食べやすい味わいから子どもにも人気があります。普通の海苔は苦手な方でも味付け海苔なら食べられるという方も多いので、海苔の風味が得意ではない方にもおすすめです。
青のり
青のりは、お好み焼きなどのトッピングや、ポテトチップスの味付けなど幅広く利用されています。天ぷらの衣に青のりを混ぜた磯辺揚げなどの料理もあり、トッピングに限らず様々な使い方ができるので料理が好きな方におすすめです。
海苔に使われる海藻の違い
海苔作りに使用される海藻は数種類あるのですが、その中でも代表的なものは以下の3種になります。
- アサクサノリ
- スサビノリ
- ウップルイノリ
これら3種の中でもスサビノリが海苔養殖における代表的な種で、日本で生産される海苔の多くはスサビノリが使用されています。昔はアサクサノリが海苔養殖に用いられていましたが、繁殖力や育てやすさでスサビノリが優れていたためスサビノリが主流となりました。
ウップルイノリは「岩海苔」として販売されている海苔の1種です。スサビノリやアサクサノリが養殖され板海苔の原料となるのに対し、岩海苔は岩場に自生する天然ものの海苔のみとなっています。天然ものなので生産量が少なく高級品ですが、風味の良さから人気があります。
海苔の産地の違い
海苔は日本各地で広く生産されるだけでなく、韓国や中国など外国でも生産されています。日本の海苔養殖はほとんどがスサビノリですが、産地による品質や味の違いもあるので購入時にはどこで生産された海苔なのかを意識してみるといいでしょう。
代表的な産地とそれぞれの特徴を簡単にですが、以下にまとめさせていただきます。
- 有明海:味と品質に優れ、生産量も多いため人気のある産地です。
- 瀬戸内海:艶のある美しい海苔で、しっかりとしたやや硬めの海苔が多く作られています。
- 東京湾:香りの良い海苔が多く、関東地方で根強い支持を得ています。
- 伊勢湾:味の良い、柔らかく滑らかな舌触りの海苔が多く作られています。
- 韓国:塩やごま油で味付けをされた海苔が日本でも韓国海苔という名称で販売されています。
- 中国:江蘇省や山東省は海苔養殖が盛んに行われ、世界各国に輸出もされています。
その年の気候や海水の温度など様々な条件によって生産量は前後しますが、日本では年間100億枚程度の海苔が生産されています。近年では海苔の養殖の担い手不足の影響もあり、生産量にはやや減少傾向がみられます。
日本で生産される海苔の40パーセント以上が有明海産で、特に佐賀県は国内の海苔生産量で1位を取ることも多いほど海苔養殖が盛んです。瀬戸内海地域を代表する海苔産地の兵庫県も、海苔の生産量が多い県となっています。
日本で様々な料理に使用するイメージから海苔は日本での生産が多いと考えがちですが、実は韓国の方が生産量は多く年間およそ130億枚ほど生産されています。国内での消費に加え国外への輸出も行われているため、韓国は海苔の生産国として有名です。
海苔の歴史
海苔の歴史は古く、大宝2年に執行された大宝律令という日本最古の本格的な律令法典にも税の1つとして記され、当時の海苔は高級品でした。
海苔は長い間庶民には手が出せない高級品でしたが、江戸時代に養殖が始まり庶民にも広まっていきました。しかしこの頃の養殖は明確な技法が確立されておらず、生産量も不安定だったため海苔は「運草」とも呼ばれていました。
1949年にイギリスの藻類学者のドリュー女史が海苔の糸状体を発見したことをきっかけに、海苔の養殖技術は大きく前進しました。ドリュー女史と親交のあった日本の藻類学者や水産試験場の研究員が研究を重ね、1953年頃までに海苔の人工養殖が完成し海苔の生産地域も拡大していきました。
海苔の語源
海苔という名前の由来は、「ヌルヌルする」を意味する「ぬら」という言葉がなまったものだと言われています。普段目にする海苔はパリッとした焼き海苔が多いためあまりヌルヌルするイメージは無いかもしれませんが、収穫する際の海苔は生の海藻なのでヌルヌルとしているので名前の由来となったと考えられています。
現代では海苔という漢字が使われていますが、昔は「紫菜」とも書かれていたそうです。紫菜は中国から伝わった名だと言われており、後にむらさきのりと読まれるようになりました。
紫菜以外にも海苔を意味する言葉があり、「神仙菜」という漢字で「あまのり」と読まれていました。神仙菜は平安末期には「甘海苔」という字が使われるようになったそうです。神仙とは不老不死の仙人という意味を持つ言葉であることから、神仙菜には不老長寿の薬草という意味が込められていると考えられています。
海苔の語源には様々な説があります。その中の1つには何かを貼る際に使用する「糊」が語源という説もあります。海苔は水に濡れると張り付くため、糊と同じ名前となったと言われているようです。
海苔の基礎知識
特別な知識が無くとも手軽に使えて美味しくいただけるのが海苔の魅力でもありますが、基礎知識を知ることでより便利で美味しい食品になります。
最近では使いやすいサイズにカットされた海苔も販売されていますが、どのサイズが何に使うのに適しているのかわからないと選ぶのにも困ってしまいます。今回はサイズの解説もさせていただくので、購入時の参考にしてください。
海苔のサイズと単位
市販されている海苔1枚のサイズは縦21センチ、横19センチを基本としており、このサイズのものを「全型」と言います。
全型を使いやすいサイズにカットしたものも販売されているので、その中でも代表的なサイズをご紹介します。
- 焼き海苔半切タイプ:全型の半分のサイズです。コンビニのおにぎりにも使用され手巻き寿司や三角おにぎりに向いています。
- 焼き海苔3切タイプ:全型の3分の1のサイズです。俵型のおにぎりや餅を巻くのに向いています。
- 8切袋タイプ:全型の8分の1のサイズです。1袋に8切8枚入りで味付け海苔やおにぎり用の海苔として販売されています。
- 12切、8切タイプ:全型の12分の1、8分の1のサイズです。一般的には12切の味付け海苔が多く、8切は主に贈答用に使用されています。
- もみのり、きざみのり:丼物やうどん、そばなどのトッピングとして活躍します。
なお、海苔は全型の板海苔が10枚で1つの単位となっており、10枚の束を1帖と言います。販売されている海苔に1帖と書かれていれば10枚、同様に3帖なら30枚、5帖なら50枚入っているということになります。
海苔を購入する際には目的にあったサイズと食べきれる量を考え、自分に合うものを選ぶようにしましょう。
海苔のオモテとウラ
実は海苔には、表面と裏面の区別があるというのはご存知でしょうか。海苔を実際に触ってもらうとわかりやすいのですが、ツルツルとした面とザラザラとした面があります。
触感の異なる2つの面のどちらが表かと言いますと、ツルツルとした面になります。表面の方が見た目にも光沢があるため、慣れてくると触らずとも表面と裏面を見分けられるようになるでしょう。
表面と裏面の区別がつけられるようになりましたら、次は活用方法です。おにぎりや巻き寿司などは、ザラザラとした裏面がお米と接するように作ってください。表面が外側にくることで口当たりが滑らかになり、見た目にも光沢があり美しく仕上がります。
いつものお弁当のおにぎりも海苔の面に気をつけるだけで食感が変わりますし、手巻き寿司などの見た目の美しさも重要な料理では表と裏を知っておくとより綺麗に作れるでしょう。触るだけで簡単にわかるので、使う前にどちらが表面なのか確認してみてください。
海苔の消費量
おにぎり、寿司など日本の食文化と深い関係にある海苔ですが、実際に国内ではどの程度の量が食べられているのでしょう。日本国内における1人当たりの海苔の年間消費量は約80枚と言われています。
年間80枚と言うと膨大な数に見えますが、世界に目を向けると日本よりも1人当たりの海苔消費量が多い国があります。日本のお隣で、韓国海苔で有名な韓国です。
韓国では国民1人当たりの年間海苔消費量が180枚ほどとされており、日本の倍以上となっています。ごま油と塩で味付けがされた韓国海苔は海苔巻きやコンビニのおにぎりにも使用され、日本と同様に海苔は食文化に根付いた欠かせない存在です。