リキュールってどんなお酒?
お酒には数々の種類がありますが、リキュールってどんなお酒のことを言うのか曖昧な人もいるかと思います。より身近で飲む機会が多いお酒な分、どんなお酒なのか知っておいて損はないでしょう。
ここではリキュールとはどんなお酒なのかについて紹介していきます。
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リキュールとは?
スピリッツ(蒸留酒)に果物や薬草などの素材の香味を移し、砂糖やシロップを加えた混成酒です。しかし単純に混成酒=リキュールというわけではありません。
ビールやワインのような醸造酒をベースにした混成酒と、スピリッツ(蒸留酒)をベースにした混成酒に分けられているので、まずスピリッツをベースに製造していることを前提としています。
語源は溶かすという意味のラテン語のLiquefacere(リケファケレ)や、液体という意味のLiquor(リクオル)が古代フランス語のlicur(リキュール)となり、現在のスペルに変わったものとされています。このリキュールのいう名前が定着する前はElixir(エリクシル)と呼ばれており、嗜好品としてではなく薬として飲まれていたようです。
各国々でリキュールは以下のように呼ばれています。
- フランス:リキュール(Liqueur)
- アメリカ、イギリス:コーディアル(Cordial)、リキューア(Liqueur)
- イタリア:リクォーレ(Liquóre)
- ドイツ:リケール(Likör)
- スペイン:リコール(Licor)
リキュールの定義
リキュールのはっきりした定義は国や地域によって異なります。どのような定義になっているのか以下で紹介していきます。
日本
酒税法上のリキュールの定義は「酒類と糖類その他の物品(酒類を含む)を原料とした酒類でエキス分が2度以上のもの(清酒、合成焼酎、しょうちゅう、みりん、ビール、果実酒類、ウイスキー類、発泡酒、粉末酒を除く。)」となっています。
エキス分とは基本的にリキュール内の糖分の量を指しており、原材料や製造方法について規制があるわけではなく自由となっています。
第三のビールと呼ばれる「金麦」や「麦とホップ」なども、日本では「発泡性リキュール」に分類されるため、パッケージには発泡酒ではなくリキュールという言葉が書かれています。
アメリカ
アメリカのリキュールの定義は「アルコール・ブランデー・ジンやその他スピリッツを用い、副材料(果実やハーブ、生薬や天然のフレーバー)を加えて製造され、砂糖を2.5%以上含むもの」です。
またアメリカ内で製造されたものをコーディアル、合成フレーバーを使用したものをアーティフィシャルと表記するよう求められます。
EU諸国
EU諸国でのリキュールの定義は「糖分が100g/L以上含まれているアルコール飲料」をリキュールと定義しており、250g/Lになるとクレーム・ド・〇〇を名乗ることができるようになります。しかし例外的にクレーム・ド・カシスだけは400g/L以上じゃないと名乗れないように規定されています。
さらにフランスだけは細かく定義されており、「副材料(果実やハーブなど)をアルコール中に煎じ、浸透させ、もしくはその液体を蒸留させたもの、またはそれぞれを調合した液体であって、砂糖などで甘味が加えられ、アルコール分15%以上のもの」をリキュールとしています。
リキュールの歴史
昔のリキュールはどんなものだったのか、現代のリキュールとの違いなど歴史について紹介していきます。
リキュールの起源
リキュールを初めて生み出したのは紀元前古代ギリシャの医師ヒポクラテスで、ワインに薬草を溶かし入れた薬酒が起源とされています。当時ワインは酸味が強くハチミツを混ぜて飲んでいたことをヒントに作ったとされています。
しかし現在のリキュールはワインではなく蒸留酒(スピリッツ)を使用して作られているので、起源とされてはいますが当時のリキュールと現代のリキュールは定義としては違ったお酒ということになります。
リキュールの変化
現代のリキュールのように嗜好品として楽しまれるようになったのは15世紀からです。北イタリアの医師ミケーネ・サボナローラがロソーリオというリキュールを生み出します。患者に薬としてのリキュールやスピリッツを勧めていましたが、飲みづらさから嫌がる患者の為にスピリッツにバラの香りを付けたものを振舞ったことが起源となっています。
16世紀にはフィレンツェの名家であるメディチ家の娘がアンリ2世に嫁入りの際に同行したシェフがポプロというリキュールを紹介しフランス宮廷内で人気となり、17世紀にかけて色合いの美しいリキュールが作り出されていくきっかけにもなりました。
現代のリキュール
現代では様々な果物、香料などが流通するようになり、昔ながらの重く深みのあるリキュールはもちろんですが、甘くて口当たりの柔らかいリキュールが一般的になっています。
技術が進んだことによって果汁の新鮮さが保たれたリキュールなど、将来的にはフルーティーでありながらも果物のジューシーさを感じることができるリキュールが増えていくことでしょう。
リキュールの分類
現在のリキュールを分類すると4種類になります。起源となっているハーブ・薬草系から現代ならではの種類のリキュールもあるので以下で紹介していきます。
ハーブ・薬草系リキュール
- ビター:カンパリ
- 茶:グリーンティー
- 花:ヴァイオレット
など。
香草、薬草類を原料としているリキュールであり、リキュールの起源にもなっている種類です。単体ではなく後述する果実系やナッツ系リキュールのアクセントや隠し味として使用させるケースも多く、リキュールを語る上でなくてはならないものとなっています。
果物系リキュール
- 柑橘:キュラソー
- 核果:ピーチ、梅酒
- ベリー:カシス、ストロベリー
など。
果物の果実や果汁、果皮を主原料としているリキュールで、歴史こそ浅いものの現代のリキュールにおいては種類が非常に多いものとなっています。ハーブ・薬草系リキュールとは違って嗜好品としての色合いが強いリキュールの種類であり、ストレートからカクテル、お菓子に使われることもある最もポピュラーなリキュールといえるでしょう。
ナッツ・種子系リキュール
- 豆:コーヒー、カカオ
- ナッツ:ヘーゼルナッツ
- カーネル:アマレット
など。
豆類や果実の種などを使ったリキュールであり、コーヒー豆のように焙煎されたものを使用するケースもあります。甘みがあるものや香り高いリキュールが多く、カクテルやお菓子などにも使われることがある定番のリキュールとなっています。
その他のリキュール
- クリーム:クリームリキュール
- 卵:アドヴォカード
など。
近年の技術の発達に伴って製造されるようになった歴史的には新しいリキュールになります。たんぱく質、脂肪分を多く含んだ材料を使ったものが目立ちます。
リキュールの製法
リキュールには製造方法がいくつかあり、製造方法によってメリットやデメリットがあります。中性スピリッツやウォッカのようなクセのない蒸留酒がベースに選ばれる場合が多く、香味原料から成分を抽出する作業を行います。
基本的には以下の4種類になるのでそれぞれの特徴も併せて紹介していきます。
蒸留法
ベースとなる蒸留酒と香味原料(又は香味原料と水)を混ぜ合わせ、蒸留釜で蒸留することによって香味成分のみを残す製造法です。蒸留した後は甘味料や着色料を加える場合もあります。澄んだ色のリキュールを製造することができるので、高級リキュールは蒸留法によって製造されているケースが多いです。
デメリットとしては細かな香りを残したい場合や果実系のように熱によって変化してしまう原料を使用する場合には不向きな製造法となります。
浸漬法
最も古くからリキュールの製造に使われてきた製法であり、蒸留を行わない製造法です。冷浸法と温浸法の2通りの製造法があります。
冷浸法はベースとなる蒸留酒に香味原料をそのまま漬けてしまう方法になります。漬けておく期間は好みになり、一般家庭で作られるリキュールはこの製造法になるケースが多いです。
温浸法はお湯に香味原料を漬けておき、お湯が冷えたらベースとなる蒸留酒に加える製造法です。冷浸法・温浸法共に、甘味料や着色料を加えるケースもあります。
エッセンス法
ベースとなる蒸留酒に事前に抽出しておいたエッセンスオイルを加えて香り付けを行う製造法であり、蒸留法や浸漬法と併用して行う場合が多いです。香りだけでなく味を補う為に加える場合もあります。
パーコレーション法
ベースとなる蒸留酒や水を香味原料に循環させることによって味や香りを抽出する方法です。熱を加えることによって変質してしまう香味原料から成分を抽出する場合に用いられる製造法です。