豆腐って何?名前の由来と基礎知識
春夏秋冬四季折々で様々な料理に使われる豆腐。皆様が普段食べる食事の中でも、この食材が食卓の彩の一部となっているのではないでしょうか。
伝統的に作られ、昔から食べられているこれはは、まさしく日本の食を支えてきた食材と言えます。しかしこの豆腐について皆様はどれだけのことをご存知でしょうか?
私たちの身近にある食材だからこそ、もっと深く豆腐のことを理解すると味わい方も変わってくるかもしれません。こちらでは豆腐の基礎知識についてご紹介していきます。
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そもそも豆腐って何?
そもそも豆腐とは何なのでしょうか?おそらくこれを見ている方々が生まれた時には既に製造され一般的な食材として並んでいたことと思います。しかし、その始まりや豆腐というものの定義がよくわからない方もみえると思います。
基本的に豆腐は、大豆のしぼり汁である豆乳を「にがり」などの凝固剤によって固めた加工食品の事を言います。
東アジアと東南アジアの広範な地域で古くから食され続けている大豆加工食品であり、日本はもちろん、奥地を含む中国本土、朝鮮半島、台湾、ベトナム、カンボジア、タイ、ミャンマー、インドネシアなどでは日常的に食べられています。
加工法や調理法は各国ごとに異なりますが、このうち日本の豆腐は白く柔らかい食感を持つ「日本独特の食品」として発達しました。
豆腐の分類
これだけならご存知の方も多いのではないでしょうか。ただこの日本の豆腐だけでも、ちょっとした違いで豆腐の定義が変わってしまいます。それが以下の3つになります。
- 手作り豆腐
- 豆腐
- 加工豆腐(かわり豆腐)
手作り豆腐
手作り豆腐は家庭や伝統的に機械を使わず、手作業のみで製造された豆腐を指します。材料もシンプルに丸大豆のみであることが多く、凝固剤にも豆腐用凝固剤の合剤のみを使用しています。
凝固方法については先述通り手作業での凝固となるので、少々手間がかかるのが特徴です。作り方についてはこちらでは割愛しますが、詳しく知りたい方はピントルの関連ページをご覧ください。
豆腐
続いて、「豆腐」と呼ばれるものは一般的に4種類に分類されます。
他にも様々な豆腐が存在しますが、大きな分類としてはこの4種類だと思っていただければいいです。この4種類については後述にて簡単に説明させていただきます。また関連ページで詳しくご説明していますので、是非ご覧ください。
どの豆腐も大豆と、大豆本来の特性成分を損なわない方法で前処理されたものを材料として使います。凝固剤についても豆乳用凝固剤と油脂や乳化剤などの加工助剤が使用されているのも手作りとは違う点となります。
そして何よりも大量に生産するために手作業だけでなく、機械的に凝固させているのもこの豆腐の特徴となります。
加工豆腐
かわり豆腐とも呼ばれ、玉子豆腐や杏仁豆腐など、豆腐とよばれるものの大豆を原料にしていないものの事をいいます。
名前の通り、変わり種が多く、赤いものや緑のもの黄色いものなど多種多様な物があります。地域や国によっても違いがあり、様々な豆腐があります。
豆腐の名称
このように厳密な定義を出すとなかなか複雑な豆腐ですが、そもそもなぜ「豆腐」と呼ばれるようになったのでしょうか。
豆を腐らせて作るわけではないのに「腐」が用いられるのか、そうなれば大豆を作られる「納豆」ではないのか?という疑問が出てくると思います。実はこの名称は漢字の意味や、豆腐の歴史が由来に関係してきます。
また「豆富」というものを見たことがあるけど?という方や、海外ではそもそも漢字表記でない以上、海外の呼び名もあるのでは?と名前については疑問が尽きないと思います。そこでここからは、この名称についてご紹介していきます。
豆腐という名称
そもそも漢字はもともと中国の文化であり、日本のそれとは意味が違うことがあります。豆腐に使われている「腐」も本来は「納屋の中で肉を熟成させる」という字義から転じて、柔らかく弾力性があるものを意味します。
つまり、豆腐は「豆から作られた柔らかく弾力性のあるもの」を表していることが由来となっています。そのため腐っている、という意味ではないんですね。漢字に意味は非常に奥深いです。
しかし俗説として「豆腐納豆説」というものもあります。
これは本来の納豆が豆を腐らせた(発酵させた)ものとして「豆腐」、豆腐が型に納められたものとして「納豆」となっていましたが、両者が取り違えられたことが名称の由来と語られることがあります。
しかしこれは明らかな誤解であるとされています。詳しくは後述しますが豆腐は中国から伝来した可能性が高い食品で、中国でもこの名前で呼ばれているのに対し、納豆は日本独自の言葉であることから、取り違えられることはあり得ないと言うことです。
ちなみに納豆の名の由来は、納所に勤めていた僧侶が納豆造りをしていたので、納所の字をとって「納豆」になったという説があります。
同時に作られ日本に伝来したなら取り違えることもあるかもしれませんが、それぞれの国で伝統的に作られ、日本に豆腐が伝えられたことから、その時点で存在している納豆と混同することなどあり得ないでしょう。
豆富や豆府という名称
この漢字を充てた名称は日本伝来後に出来たとされています。
元禄時代に絹ごし豆腐を発明した豆富料理店「根岸し 笹乃雪」の9代目当主が、20世紀前半ごろ、食品に「腐る」という字を用いることを嫌い「豆富」と記すようになって以降、「腐」という文字を使わない表記が日本中に伝わったと言われています。
また豆腐を好んだ日本の作家である泉鏡花は、極端な潔癖症であったことから汚れたものを感じさせる「腐」ではなく、「豆府」と表記したと言われています。
海外での豆腐の名称
日本食から生まれているものは、しばしばその名称をローマ字充てとして海外で表記されていることが多いです。
寿司が「sushi」としてそうであるように、豆腐も「tofu(トーフ)」と表記されます。ただ豆から作られた物という意味で「bean curd(ビーンカード)」や「soybean curd(ソイビーンカード)」とも呼ばれています。
ちなみにbeanが豆、soybeanが大豆ということは分かると思いますが、curdは海外での凝乳やチーズなどの乳製品凝固物のことを指します。
豆腐は乳製品ではありませんが、豆乳を凝固剤によって固めていることから、このような名称が海外では付けられています。また先述の「豆腐」の大別された4つのうち以下、3つについても海外の名称が存在します。
- 木綿豆腐 ⇒ regular tofu
- 絹ごし豆腐 ⇒ Kinugoshi-tofu または tofu with whey
- 充填豆腐 ⇒ packaged-tofu
豆腐の歴史
それでは豆腐の歴史についても簡単に触れておきましょう。
豆腐の起源については諸説あり、紀元前2世紀とも8~9世紀にかけての唐代中期とも言われていますが、定かとはなっていません。ただ南宋末期にかけて一般に普及し、明朝や清朝の時代になると豆腐の加工品も盛んに作られるようになっています。
日本への伝来
日本の伝来についても少々あいまいなところがあります。一般に中国から日本に伝来したのは遣唐使の留学僧として中国に渡り、帰国後真言宗を開いたとされる空海とも、鎌倉時代の帰化僧によるとする説など、こちらも諸説あります。
これは明確に記す文献がないためですが、鎌倉以前の1183年(寿永2年)の奈良・春日神社の供物帖の中に「唐符」という記述があることから、このような説が唱えられています。ただこれにより、少なくとも唐時代に中国で豆腐が作られていたことは有力になったわけです。
日本での普及は鎌倉時代末期で、民間に伝わるようになり、室町地時代には各地で広がり、江戸時代にはよく食べられる料理となったとされています。
またこの江戸において豆腐料理屋は評判となり、先述の豆富の名称で紹介した豆富料理店「根岸し 笹乃雪」は絹ごし豆腐「笹の雪」を誕生させ、未だに続く老舗として愛されています。
大量生産の時代へ
この時代は機械がないためすべて手作業となり、大量生産はできませんでしたが、やがて近代工業が発達するようになり、手作業から機械化が進んで大豆から効率よく豆腐を生産できるようになりました。
それにより安価で提供できるようになり、現代の日本における一般的な食品となりました。やがて多くの種類の豆腐が作られ、これを使った料理も数々生み出されていきました。
欧米への進出
この食品が20世紀末期以降のアメリカを始めとした欧米諸国へと進出することになります。高カロリー・高脂肪の動物性食品や嗜好食品を多く摂る不健康な食習慣への反省と健康的な食品への関心から、優れた健康食品と言える豆腐に注目が集まりました。
現在では欧米諸国でも日常的に食料品店で売られる食品となり、広く普及することとなったわけです。
こちらの歴史についても関連ページでご紹介しています。豆腐に興味を持ち、もっと詳しく知りたい方は是非ご覧ください。
豆腐の原料
それでは続いて豆腐の材料について見ていきましょう。これは先でも少し触れていますが、大きく分けると大豆、凝固剤、水と大変シンプルな材料で作れます。
味噌もそうですが、日本に伝来し多くの種類が作られた食品の多くは、このように単純な素材を加工することで様々な種類が作られているだけに、日本人の食への探求心が伺えます。
豆腐の大豆
大豆は豆腐の唯一の原料とも言えるものです。タンパク質の含有分の高い大豆が求められ、香り、また遺伝子組み換えをしているか否かなどの安全面が考慮される事が多い原料です。
後述しますが、タンパク質が多い豆乳でないと凝固剤が上手く作用せず、しっかりとした豆腐にはなりません。そのため、タンパク質の含有量は特に重要視されます。
日本の食品表示
大豆油や飼料用を除く食品用大豆の国内自給率は現在21%、全体では6%で、輸入大豆の8割はアメリカ産に頼っています。またそのアメリカ産大豆の作付け面積の9割は遺伝子組み換え大豆となっています。
5%以上の国内産大豆の使用で「国内産大豆使用」、50%以上の国内産大豆の使用で「国内産大豆100%使用」の表示が可能、また5%以下の遺伝子組み換え大豆混入は「遺伝子組み換え不使用」と表示されるため、厳密に100%や0%とは言えない注意が必要です。
豆腐の凝固剤
豆腐の凝固剤は一般的に「にがり」と呼ばれており、塩化マグネシウムが主成分で、古くは、塩田で海水から塩を作るときに、いっしょに抽出される副産物でした。
また、塩を運搬する途中でにがり成分が分かれて梱包した俵に染み出すこともあり、海から遠い街道沿いではよく利用されていました。
現在では、工業化されて塩化マグネシウムの純度の高いものや、海外の岩塩採掘場で採取されたもの、あるいは国内外の工業的な製塩の過程で抽出されたものが多く、実際に塩田から取っているものは少なくなっています。
豆腐の発祥地とされる中国では石膏(硫酸カルシウム)を粉末として水に溶いたものを凝固剤としています。また韓国でもこの製法を用いる工場があります。
化学的には豆腐の凝固は豆乳のタンパク質が凝固剤によりゲル化することで起こります。従って、豆腐はにがりによって架橋されたタンパク質の網目構造に、多数の水分子を取り込んだものとなっています。
豆腐の水
おいしい豆腐の条件として水も挙げられます。豆腐の約80~90%は水である以上、粗悪な水を使えば上述の通り、タンパク質の間にそれが取り込まれ、当然味は悪くなります。また豆腐の製造工程でのさらし水が良くなければ淡白な豆腐の味を損ねることになります。
豆腐の種類
最後に分類についてです。先に4つに大別できることは触れてきましたが、他にも豆腐の二次加工品や豆腐を模した食品もあります。この豆腐を模したもののいくつかが先述の加工豆腐(かわり豆腐)と呼ばれます。
二次加工品や模した食品については後にリストで紹介させていただくとして、先に大別の4種類についてももう少し触れていきましょう。
木綿豆腐
豆乳に凝固剤を加えて凝固させ穴の開いた木綿豆腐用の型箱に布を敷いて流し込み圧搾成形した豆腐のことを言います。表面に型箱の内部に敷かれた布目が付くことからこの名で呼ばれており、メジャーな商品として普通豆腐という別称もあります。
絹ごし豆腐
濃い豆乳全体を凝固剤で凝固し、絹ごし用の型箱に流し込んでゲル状に固めて水にさらした豆腐を指します。こちらも木綿豆腐同様にメジャーな豆腐です。また世界初の絹ごし豆腐の名である「笹の雪」と洒落た名称でも呼ばれることがあります。
ソフト豆腐
絹ごし豆腐状に凝固させたものを木綿豆腐の型箱に流し込んで軽く圧した木綿豆腐と絹ごし豆腐の中間程度の濃度の豆腐のことを言います。京都では嵯峨豆腐と言われています。
充填豆腐
濃い豆乳に凝固剤を加えて、合成樹脂製の角型の容器に充填し、摂氏約90度で40分から50分加熱して成形、冷却した豆腐を指します。
豆腐の関連食品
二次加工品
- 焼き豆腐
- 乾燥豆腐:六浄豆腐・高野豆腐・燻り豆腐
- 油揚げ
- 厚揚げ
- がんもどき
- 腐乳
- 豆腐よう
- 臭豆腐
- 醸豆腐
- 熏豆腐
- 鶏糕
模した食品
- 玉子豆腐
- 胡麻豆腐
- 杏仁豆腐
- 牛乳豆腐
- ごどうふ
- ピーナッツ豆腐
- ジーマーミ豆腐
- カシ豆腐
- トトリムク
- メミルムク
- ハウピア
- ひよこ豆豆腐