失敗しない!蘇鉄味噌の上手な作り方
味噌では赤味噌や白味噌、合わせ味噌が耳になじみのある名称でしょう。しかし味噌はそれだけではありません。地方によっては主流となる味噌は違いがあります。
今回は沖縄などで主の調味料となっている蘇鉄味噌についてご紹介していきます。
スポンサーリンク
蘇鉄味噌(そてつみそ)とは
蘇鉄味噌は奄美方言で「なり味噌」と呼ばれ、鹿児島県奄美群島や沖縄県の粟国島で生産されている蘇鉄の実と玄米と大豆と原料にした味噌です。
もともと大豆が出来にくい気候であったため、玄米と蘇鉄の実を使った味噌を作り出したのが始まりです。
ここで注意なのが生の蘇鉄の種子にはサイカシンという有毒で発癌性がある成分が含まれます。ただ水溶性であり、蘇鉄の中に含まれる成分によって分解されるため、発酵熟成させた蘇鉄味噌は無害となっています。
蘇鉄の実の種子である「なり」の解毒方法は後ほど説明を入れさせていただきます。
蘇鉄味噌の作り方
蘇鉄味噌を作るためには「なり(蘇鉄の実)」が必要となりますが、残念ながらあまり出回っていないようです。
さらに、もし蘇鉄の実を手に入れてもそのままでは食用に出来ません。今回はなりの解毒の方法から順に味噌にするまでの工程をご紹介していきます。
蘇鉄味噌作りに必要な材料・道具
ではまず必要な材料や道具について説明していきます。分量も一緒に載せていますので、参考にしてください。道具の[ ]はあれば準備できるといいですが、推奨ではありません。
材料
- 大豆 1kg
- 乾燥米麹 1kg
- なり(蘇鉄の実) 1kg
- 塩 540g
- 焼酎(またはホワイトリカー) 少量
- 種水(一度沸騰させて冷ました水) 100~150ccを目安
道具
- 大きめの鍋(大豆容積の2.5倍以上) [圧力鍋(容積は鍋に同じ)]
- ザル[さんばら]
- ビニール袋 [フードプロセッサー又は電動ミンチ機]
- 輪ゴム(ビニール袋で行う場合)
- プラスチックのたらい [大きなステンレスボウル]
- チャック付ビニール袋 [プラスチック樽(内蓋付き)と重石500g~1kg]
- 霧吹き
以上を準備してください。塩分濃度は11%になるように準備しています。塩分濃度の計算方法は後程ご説明します。また大豆と乾燥米麹の分量の比は1:1になります。
道具でプラスチック樽を使う方は塩蓋用の塩も準備するといいです。仕込んだ味噌と内蓋の間に入れます。詳しくは手順にて説明します。
作り方の手順
先ほど簡単で失敗しにくい味噌作りをご説明しますと言いましたが、どの味噌を作るにしても熟成するまでに時間だけはかかることはご了承いただきたいと思います。
また他の味噌の製法と違い、工程になりの解毒が入っていますので、より日数がかかります。
蘇鉄味噌作りは、簡単に説明すると以下の6工程です。
- なりの解毒
- 下準備
- 大豆を煮る
- 塩きり麹を作る
- 仕込み味噌を作る
- 味噌を仕込む
それでは、手順ごとに詳しく説明してきます。
なりの解毒
- 風で乾燥させた蘇鉄の実を木槌で割り、種子を取り出します。乾燥しているので割れやすいです。
- 取り出した種子を水の中に沈め数日間浸し発酵させ、取り出したら天日乾燥をさせます。
- 乾燥させた種子を搗き砕き、されにザルで乾燥させます。乾燥させると粉末になります。これで解毒したなりの完成です。
なりの毒は水溶性なので、水の中に浸すことで毒が溶け出し解毒することが可能です。この工程があるので蘇鉄味噌は少々面倒ではあります。
下準備
- 大豆をよく洗い、たっぷりの水に浸けます。時間は10~12時間を目安に浸けてください。容積は初期の大豆の2.5倍程度まで膨らみます。
大豆を煮る
- 水を含んで膨らんだ大豆を鍋に移し、たっぷりの水を入れ煮立てます。沸騰したら弱火でコトコトと柔らかくなるまで煮ます。
- 柔らかくなるまでに2時間以上を要します。あくが出てきますので、吹きこぼれ防止のためにも取り除いてください。親指と人差し指で大豆を縦につまんで押しつぶれるくらいまで煮てください。割れ目から2つに割れるのはまだ煮方が不足しています。
- 煮えた大豆をザルにあげ、40℃くらいまで冷まします。
- 冷ました大豆をビニール袋に入れ、輪ゴムでしっかり蓋をして足で踏んですり潰します。フードプロセッサーなどがある方は楽にすり潰せます。また道具でご紹介はしてませんが、すり鉢で潰しても大丈夫です。
圧力鍋を使用する場合は重りが動いてから15分、火を止めて15分煮ればいいので、非常に早く煮ることができます。
塩切り麹を作る
- 分量を量ったなりと塩、乾燥米麹をたらいやボールの中で合わせます。
- まんべんなく混ざるまで、しっかりと手で混ぜ合わせます。
麹に塩をまぶすことによって麹の水分活性を下げ、麹菌自体の発育を抑えます。発育を抑えられた麹菌は自己融解を起こし、味噌を美味しくするための酵素を出すようになります。
塩切り麹は大豆を冷ましている間に作るとスムーズに工程を進められます。
蘇鉄と玄米を麹箱に入れてニホンコウジカビを繁殖させ、蘇鉄麹にしてから蘇鉄味噌を作るのが伝統的な方法となっていますが、作業が非常に大変なため今回は米麹を使用して作成します。
仕込み味噌を作る
- すり潰した大豆と塩切り麹をよく混ぜます。この時、種水を混ぜ全体をしっかりとなじませてください。
- 全体的になじんだら、押し固めます。
- 押し固めたら掌よりも少し大きいくらいの味噌団子を作っていきます。
種水の分量はあくまで目安です。大豆1kgに対し、種水は100~150ccとされています。
大豆は柔らかく煮て、固めに仕込むのが蘇鉄味噌作りの失敗しないコツです!そのため種水は様子を見ながら上記の分量を加えていくことをオススメします。
味噌を仕込む
- 味噌を仕込む容器(簡単なのはビニール袋のみ)の中を消毒します。焼酎などを霧吹きに入れ、容器内に吹きかけ消毒してください。ただし大量に吹きかけないようにしてください。あくまでも少量でいいです。
- 味噌団子を袋の中に1つずつ入れていきます。団子は1つ入れるたびに、げんこつで上から押し込み、団子の間の隙間をしっかり埋めていきます。
- 詰め終わったら空気を抜き、チャックをしっかり閉めます。
プラスチック樽を使う場合も、中に漬物用のビニール袋を敷いて、袋の中をアルコール除菌をしてください。仕込み味噌はそのビニール袋の中に入れます。
上記と同じように、中に味噌団子を詰め終わったら空気を抜きながら袋の口を閉め、その袋の上に、塩蓋用の塩を入れた袋を乗せます。内蓋で樽の蓋をして重石を乗せたら完成です。
隙間を作らないのも、空気を入れないのも、アルコール除菌も基本的には雑菌やカビの防止の為です。このあたりの工程は特に気を付けてやるのが、失敗しないためのコツです。
蘇鉄味噌作りで失敗しないコツ!
美味しい蘇鉄味噌を作るには、そもそも以下のポイントを守って味噌作りをすることが大切となります。失敗しないために覚えておきたいコツを紹介しておきます。
- 米麹は早めに使用する
- 大豆の手洗いは丁寧に行う
- 大豆に水分をたっぷり吸わせる
- 大豆を煮る時は1.5倍以上(あるいは鍋に入れた大豆のかさよりさらに3~4cm上)の水を使う
- 親指と小指で潰せるくらい柔らかく煮る
- 混ぜるのは大豆が冷めてから
- 材料を混ぜる時は心を込めて混ぜる
また、上述したポイント以外にも、「作成時期・熟成期間・保管方法」もしっかりと覚えて蘇鉄味噌作りをすれば、より一層美味しい蘇鉄味噌が作れます。
ピントルの味噌専門ページでは、初めて手作り味噌に挑戦するという方のために、味噌作りの全てを記したページもご用意しております。つくりたい味噌の味わいに合わせた材料の分量から、初めての味噌作りにおすすめな道具のセットまでご紹介していますので、味噌作りに挑戦する方は是非確認してください。
蘇鉄味噌作りに適した時期
まず作成時期ですが、雑菌の繁殖も考えると1月~2月あたりの寒いくらいの時期がオススメです。また作成時期によって熟成期間が多少変わりますので注意してください。
蘇鉄味噌の熟成期間
蘇鉄味噌は1ヶ月でも食べることが出来ます。ただ長めに熟成させた方が風味が良くなります。
10月~4月の涼しい時期に作成した場合は6~8ヶ月間、その他の月に仕込んだ場合は4~5ヶ月間の熟成期間を見込んでください。
熟成期間中は、まめに様子を見てください。チャック付きのビニール袋の場合は熟成中発酵が活発になった場合、袋が膨れてくる場合があります。まめに空気抜きをしてください。
蘇鉄味噌の保存方法と保管場所
熟成中の保存場所は温度が高めで湿度が低く、直射日光を避けた風通しの良い場所に保管してください。15℃以下では熟成が進みにくくなります。理想品温は27℃ですが、手作り味噌はリビングなど室温も高めで変化の目が届きやすい場所が最適です。
沖縄はもともと高温多湿なため、普段は納屋などで保管することが多いです。しかし、家庭で作られるときは、ここまでの環境はなかなか無いと思いますので、リビング程度の室温でちょうど良くなります。
熟成が終わり、味噌が完成したら味噌を上下によく混ぜます。必要な分をタッパーなどに入れ、ラップやビニールシートを密着させ空気に触れないようにし、冷蔵庫や冷暗所に保存してください。
手作り蘇鉄味噌にカビが生えてしまった場合
空気などをしっかり抜き、消毒をしてあればなかなかないですが、万が一カビが生えたとしても失敗ではありません。
カビを取り除き、再度アルコール殺菌を行い、空気を抜いて蓋を閉めてください。特に高温多湿になる時期はカビが発生する可能性があります。まめにチェックを行ってください。
蘇鉄味噌の塩分濃度の調整方法
ここからは分量の調整です。このような計算が苦手と言う方も見えると思うので、公式化したものを掲載しておきます。今回の分量を元に例も掲載しますので、参考にしてください。
その場合、必ず必要な道具があります。
- 量り(電子天秤などでもいいですが重くても量れるもの)
- 計算機
暗算が得意なら計算機はいりませんが、あった方が間違いがありません。
計算方法
まずは実際の数値で具体的に見た方が分かりやすいと思うので、上の作成分量を元に説明します。
- 茹で上がった大豆の重さ ⇒ 2200g (=2.2kg)
- 米麹の重さ ⇒ 1000g (=1kg)
- なり(蘇鉄の実)の重さ ⇒ 1000g (=1kg)
- 種水 ⇒ 150g (分量はccで表記してありますが、そのままgとして考えて大丈夫です)
- 塩分の設定濃度 ⇒ 11%
この分量で考えられています。大豆は元々1kgでしたが、水分を吸って倍化しています。では、計算していきましょう。
最初にパーセントはそのまま計算式に組み込めないので、計算できる形にします。今回は11%なので以下のようになります。
11%×0.01=0.11
続いて、この出来上がった数値を1から引きます。
1-0.11=0.89
また塩以外の分量は全て合計しておいてください。今回は以下のようになります。
2200g+1000g+1000g+150g=4350g
ここからまず塩も含めた全体の分量を求めます。
4350g÷0.89=4887.64…g
割り切れないので、小数点以下は切り捨ててください。また下一桁は四捨五入して4890gで計算します。そして塩の分量のみを求めばいいので、
4890g−4350g=540g
となります。
塩の分量を算出する公式
これを公式化すると、計算で必要な分量の詳細と、作りたい塩分濃度は次のようになります。
- 茹で上がった大豆の重さ ⇒ [A]g
- 米麹の重さ ⇒ [B]g
- なり(蘇鉄の実)の重さ ⇒ [c]g
- 種水 ⇒ [Dg (分量はccで表記してありますが、そのままgとして考えて大丈夫です)
- 塩分の設定濃度 ⇒ [E]%
この文字を使って表現すると次のようになります。
(A+B+C+D)÷(1−E×0.01)−(A+B+C+D)=必要な塩の分量
ここに必要な数値を入れていけば求まります。割合の計算なのでやはり難しく見えますね。
ただ減塩をすることによって味は変わります。極度の減塩は風味を損ないますので、最低でも8~9%に抑えることをオススメします。
また減塩をすることによって塩切り麹の効果も薄まる可能性があります。熟成中の発酵の進み方、カビの生えやすさにも影響があり得るので、慣れないうちは設定分量で作成することをオススメします。