失敗しない!合わせ味噌の上手な作り方
世の中には味噌の種類がたくさんあります。故郷で良く使われる味噌や好みの味噌があると思いますが、料理によって合う味噌は様々です。
今回はその中でも合わせ味噌の上手な作り方について、味噌を調合して作る方法と、材料から作る方法を紹介していきたいと思います。
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合わせ味噌とは
まず合わせ味噌とはどのような味噌でしょうか。そこからご紹介していきたいと思います。
「合わせ味噌」とはその名のとおり、米味噌、麦味噌または豆味噌を3種もしくは2種調合したものをいいます。あるいは米麹、麦麹または豆麹を混合したものを使用した味噌です。
ただ一般的には赤味噌と白味噌を合わせたものをいうことが多いですが、白味噌と田舎味噌である麦味噌を合わせることもあります。
複数の味噌を調合することから、別名「調合味噌」とも呼ばれます。
合わせ味噌の調合に使う味噌の特徴
先ほど調合で使うとご紹介した味噌の特徴を簡単にご説明します。なぜ赤味噌と白味噌あるいは白味噌と田舎味噌を合わせるかは、この特徴が関わってきています。
調合する際は「できる限り特徴の遠い味噌を混ぜる」と美味しい合わせ味噌が作れると言われています。
赤味噌
生成には米麹と豆麹を使うことが主です。濃い褐色になることから赤味噌と呼ばれていますが、使われる材料から豆味噌とも呼ばれます。
味は中辛口で塩分は少々高めの10%程度になります。辛みと旨味があるのが特徴です。
白味噌
生成には米麹を主に使い、そこから米味噌とも呼ばれています。熟成期間が赤味噌よりも短く、生成過程上攪拌することもないので、大豆の色が残った白っぽい色になるのが白味噌の所以です。
塩分濃度は赤味噌よりも低めの5%程度になります。甘口柔らかめで、こってりとした味の特徴があります。
田舎味噌
主に麦麹を使います。そこから麦味噌とも呼ばれています。甘口と辛口の2種類があり、料理によって使い分けをします。赤味噌ほどではないですが、赤みがかった味噌であることが特徴の1つです。
また甘口、辛口と共に少々の酸味を備えた味噌になります。
合わせ味噌の調合方法
合わせ味噌を作る時の最大のポイントは「味噌は遠いものを合わせる」と言うのがコツになります。つまり味であれば"辛口と甘口"、色であれば"赤系と淡色系"となるのです。
先ほど紹介した味噌の特徴を思い出してみましょう。このコツに当てはめてみると、赤味噌と白味噌、あるいは白味噌と麦味噌の組み合わせが最適となるわけです。
合わせ味噌はお互いの味噌に足りない味や風味を補えるのが最大の魅力となります。
では合わせ味噌の調合はどこでするのか、それは食べる直前に「味噌漉し」の中で必要な割合の味噌を入れ、湯に溶かすと言う作り方が一般的です。
続いて混ぜる味噌の比率をご紹介します。合わせ味噌は味噌汁で使うことが主となるので、味噌汁を例に説明します。使う具材や季節によっても変わるので、そのあたりもみていきましょう。
万能型の合わせ味噌
- 赤味噌:白味噌=3:4
どんな具材でも美味しくいただける配合です。湯に昆布だしを取り、料理酒を小さじ1合わせるのがコツです。
根菜に使う合わせ味噌
- 白味噌:田舎味噌=1:1
根菜に使う場合は少し酸味のある田舎味噌を合わせると味に深みが出ます。もちろん赤味噌と白味噌の配合でも美味しくなりますが、この調合をオススメします。
またこの調合の仕方は「割烹の賄い豚汁」で使われることでも有名です。白味噌と田舎味噌を混ぜ、酒でほぐした酒粕と混ぜて寝かした物を使うので、少し手間はいります。しかしとても美味しい豚汁ができます。
魚介類に使う合わせ味噌
- 赤味噌:白味噌=2:1
魚介類を材料に使う場合は生臭さが出るため、それを消す濃厚で風味がある豆味噌を多めに使います。あとは鰹や昆布で出汁をとると美味しくいただけます。
季節に合わせた合わせ味噌
- 夏場 赤味噌:白味噌=7:3
- 冬場 赤味噌:白味噌=1:1
夏場は特に発汗などで塩分を消費しやすいので、塩分濃度が高めの赤味噌を多めに入れると美味しくいただけます。冬は冷めやすいため、多少温度が下がっても旨味を味わうために等比の調合となっています。
季節ごとに味噌の合わせ方を変えるあたりは日本料理独特の気遣いを感じますね。
あくまでもこれらの混ぜ方は一例になります。人によって味覚は違いますので、上の調合を参考にしつつ自分の好みの合わせ方を追求してもらいたいと思います。出汁によっても味わいは変わりますので、そちらも是非いろいろ試してください。
材料から作る合わせ味噌の作り方
合わせ味噌には、味噌同士を調合する方法以外にも、味噌作りの際に使用する麹を合わせて作る合わせ味噌も存在します。ここからは、合わせ味噌の作り方をこちらでご紹介していきたいと思います。
合わせ味噌は様々な製法がありますが、今回は作って保存したいという方向けに、材料から簡単かつ上手に作る方法として、米麴と麦麴を使った製法をご紹介していきます。
合わせ味噌作りに必要な材料・道具
では続いて保存して使いたい方向けに材料から使う方法もご紹介します。
まず必要な材料や道具について説明していきます。分量も一緒に載せていますので、参考にしてください。道具の[ ]はあれば準備できるといいですが、推奨ではありません。
材料
- 大豆 1kg
- 乾燥米麹 1kg
- 乾燥麦麴 1kg
- 塩 620g
- 焼酎(またはホワイトリカー) 少量
- 種水(一度沸騰させて冷ました水) 740ccを目安
道具
- 大きめの鍋(大豆容積の2.5倍以上) [圧力鍋(容積は鍋に同じ)]
- ザル
- ビニール袋 [フードプロセッサー又は電動ミンチ機]
- 輪ゴム(ビニール袋で行う場合)
- プラスチックのたらい [大きなステンレスボウル]
- チャック付ビニール袋 [プラスチック樽(内蓋付き)と重石500g~1kg]
- 霧吹き
以上を準備してください。塩分濃度は11%になるように準備しています。塩分濃度の計算方法は後程ご説明します。また大豆と乾燥米麹そして乾燥麦麴の分量の比は1:1:1になります。
道具でプラスチック樽を使う方は塩蓋用の塩も準備するといいです。仕込んだ味噌と内蓋の間に入れます。詳しくは手順にて説明します。
作り方の手順
先ほど簡単で失敗しにくい味噌作りをご説明しますと言いましたが、どの味噌を作るにしても熟成するまでに時間だけはかかることはご了承いただきたいと思います。
米味噌作りは、簡単に説明すると以下の5工程です。
- 下準備
- 大豆を煮る
- 塩きり麹を作る
- 仕込み味噌を作る
- 味噌を仕込む
それでは、手順ごとに詳しく説明してきます。
下準備
- 大豆をよく洗い、たっぷりの水に浸けます。時間は10~12時間を目安に浸けてください。容積は初期の大豆の2.5倍程度まで膨らみます。
大豆を煮る
- 水を含んで膨らんだ大豆を鍋に移し、たっぷりの水を入れ煮立てます。沸騰したら弱火でコトコトと柔らかくなるまで煮ます。
- 柔らかくなるまでに2時間以上を要します。あくが出てきますので、吹きこぼれ防止のためにも取り除いてください。親指と人差し指で大豆を縦につまんで押しつぶれるくらいまで煮てください。割れ目から2つに割れるのはまだ煮方が不足しています。
- 煮えた大豆をザルにあげ、40℃くらいまで冷まします。
- 冷ました大豆をビニール袋に入れ、輪ゴムでしっかり蓋をして足で踏んですり潰します。フードプロセッサーなどがある方は楽にすり潰せます。また道具でご紹介はしてませんが、すり鉢で潰しても大丈夫です。
圧力鍋を使用する場合は重りが動いてから15分、火を止めて15分煮ればいいので、非常に早く煮ることができます。
塩切り麹を作る
- 分量を量った乾燥米麹と乾燥麦麴をたらいやボールの中で軽く合わせます。
- 続いて塩を混合した麴の中に入れます。
- まんべんなく混ざるまで、しっかりと手で混ぜ合わせます。
麹に塩をまぶすことによって麹の水分活性を下げ、麹菌自体の発育を抑えます。発育を抑えられた麹菌は自己融解を起こし、味噌を美味しくするための酵素を出すようになります。
塩切り麹は大豆を冷ましている間に作るとスムーズに工程を進められます。
仕込み味噌を作る
- すり潰した大豆と塩切り麹をよく混ぜます。この時、大豆と麴を入れて20回ほど軽く混ぜます。
- 出来たものに種水を入れ全体をしっかりとなじませてください。60回を目安にかき混ぜるといいです。
- 全体的になじんだら、押し固めます。
- 押し固めたら掌よりも少し大きいくらいの味噌団子を作っていきます。割れるほど硬くはなりませんが、形が崩れるほどではありません。
種水の分量はあくまで目安です。通常の味噌より水が多目ですが、味噌作りに慣れてきたら少しずつ混ぜながら水の分量は調整してください。
大豆は柔らかく煮て、固めに仕込むのが味噌作りの失敗しないコツです!そのため種水は様子を見ながら上記の分量を加えていくことをオススメします。
味噌を仕込む
- 味噌を仕込む容器(簡単なのはビニール袋のみ)の中を消毒します。焼酎などを霧吹きに入れ、容器内に吹きかけ消毒してください。ただし大量に吹きかけないようにしてください。あくまでも少量でいいです。
- 味噌団子を袋の中に1つずつ入れていきます。団子は1つ入れるたびに、げんこつで上から押し込み、団子の間の隙間をしっかり埋めていきます。
- 詰め終わったら空気を抜き、チャックをしっかり閉めます。
プラスチック樽を使う場合も、中に漬物用のビニール袋を敷いて、袋の中をアルコール除菌をしてください。仕込み味噌はそのビニール袋の中に入れます。
上記と同じように、中に味噌団子を詰め終わったら空気を抜きながら袋の口を閉め、その袋の上に、塩蓋用の塩を入れた袋を乗せます。内蓋で樽の蓋をして重石を乗せたら完成です。
隙間を作らないのも、空気を入れないのも、アルコール除菌も基本的には雑菌やカビの防止の為です。このあたりの工程は特に気を付けてやるのが、失敗しないためのコツです。
合わせ味噌作りで失敗しないコツ!
美味しい合わせ味噌を作るには、そもそも以下のポイントを守って味噌作りをすることが大切となります。失敗しないために覚えておきたいコツを紹介しておきます。
- 調合で作る場合は「味噌は遠いものを合わせる」を合言葉に
- 使う材料によって比率を変える
- 米麹、麦麴は早めに使用する
- 大豆の手洗いは丁寧に行う
- 大豆に水分をたっぷり吸わせる
- 大豆を煮る時は1.5倍以上(あるいは大豆のかさより3~5cm上の高さになる量)の水を使う
- 親指と小指で潰せるくらい柔らかく煮る
- 混ぜるのは大豆が冷めてから(30℃以下)
- 大豆と麹と塩は一度に混ぜない
- 材料を混ぜる時は心を込めて混ぜる
また材料から作る場合は、上述したポイント以外にも、「作成時期・熟成期間・保管方法」もしっかりと覚えて合わせ味噌作りをすれば、より一層美味しい合わせ味噌が作れます。
ピントルの味噌専門ページでは、初めて手作り味噌に挑戦するという方のために、味噌作りの全てを記したページもご用意しております。つくりたい味噌の味わいに合わせた材料の分量から、初めての味噌作りにおすすめな道具のセットまでご紹介していますので、味噌作りに挑戦する方は是非確認してください。
合わせ味噌作りに適した時期
まず作成時期ですが、雑菌の繁殖も考えると1月~2月あたりの寒いくらいの時期がオススメです。また作成時期によって熟成期間が多少変わりますので注意してください。
合わせ味噌の熟成期間
10月~4月の涼しい時期に作成した場合は5~8ヶ月間、その他の月に仕込んだ場合は4~5ヶ月間の熟成期間を見込んでください。
熟成期間中は、まめに様子を見てください。チャック付きのビニール袋の場合は熟成中発酵が活発になった場合、袋が膨れてくる場合があります。まめに空気抜きをしてください。
合わせ味噌の保存方法と保管場所
熟成期間中の保存場所は温度が高めで湿度が低く、直射日光を避けた風通しの良い場所に保管してください。15℃以下では熟成が進みにくくなります。理想品温は27℃ですが、手作り味噌はリビングなど室温も高めで変化の目が届きやすい場所が最適です。
熟成が終わり、味噌が完成したら味噌を上下によく混ぜます。必要な分をタッパーなどに入れ、ラップやビニールシートを密着させ空気に触れないようにし、冷蔵庫や冷暗所に保存してください。
手作り合わせ味噌にカビが生えてしまった場合
空気などをしっかり抜き、消毒をしてあればなかなかないですが、万が一カビが生えたとしても失敗ではありません。
カビを取り除き、再度アルコール殺菌を行い、空気を抜いて蓋を閉めてください。特に高温多湿になる時期はカビが発生する可能性があります。まめにチェックを行ってください。
またどうしてもカビを避けたいという方は、大豆と麹の調整を行うといいです。大豆の分量に対して麴が少ないとそれだけカビが発生しやすいので麴の量を増やすと効果的です。
合わせ味噌の塩分濃度の調整方法
ここからは分量の調整です。このような計算が苦手と言う方も見えると思うので、公式化したものを掲載しておきます。今回の分量を元に例も掲載しますので、参考にしてください。
その場合、必ず必要な道具があります。
- 量り(電子天秤などでもいいですが重くても量れるもの)
- 計算機
暗算が得意なら計算機はいりませんが、あった方が間違いがありません。ここでは複数の味噌を調合したときの塩分計算と、材料から作ったときの塩分計算の2種類を掲載しておきます。
調合による塩分の計算方法
まずは調合をした場合の塩分と塩分濃度の計算を説明していきます。今回紹介した万能型の調合を元に計算していきます。
- 赤味噌 ⇒ 300g 12%
- 白味噌 ⇒ 400g 11%
赤味噌:白味噌 = 3:4 の比率で準備した場合です。計算しやすい分量を用意しました。まずそれぞれの塩分濃度から各味噌の塩分を計算します。パーセントはそのまま計算に使えないので、まず使える形に直します。
- 赤味噌 12%×0.01=0.12
- 白味噌 11%×0.01=0.11
これで計算に用いることが出来ます。続いて実際の塩分を計算します。
- 赤味噌 300g×0.12=3.6g
- 白味噌 400g×0.11=4.4g
次に味噌全体の質量と、混ぜ合わせたときの塩の量をそれぞれ出します。
- 味噌全体 300g+400g=700g
- 塩の質量 3.6g+4.4g=8g
これで調合後の塩分濃度が出せます。
8g÷700g×100=11.4285・・・
となり、およそ11%程度の塩分濃度となります。合わせ味噌を調合するときには塩分濃度の算出の参考にしていただければ幸いです。それではこれを計算しやすいように公式化してみましょう。
調合による塩分濃度を算出する公式
- 赤味噌 ⇒ [A]g [C]%
- 白味噌 ⇒ [B]g [D]%
{(A×C×0.01)+(B×D×0.01)}÷(A+B)×100=調合後の塩分濃度
この文字部分に数値を入れていただければ必要な計算が出来ます。是非ご活用ください。
材料から作った場合の塩分濃度計算方法
こちらもまずは実際の数値で具体的に見た方が分かりやすいと思うので、上の作成分量を元に説明します。
- 茹で上がった大豆の重さ ⇒ 2200g (=2.2kg)
- 米麹の重さ ⇒ 1000g (=1kg)
- 麦麴の重さ ⇒1000g (=1kg)
- 種水 ⇒ 740g (分量はccで表記してありますが、そのままgとして考えて大丈夫です)
- 塩分の設定濃度 ⇒ 11%
この分量で考えられています。大豆は元々1kgでしたが、水分を吸って倍化しています。では、計算していきましょう。
最初にパーセントはそのまま計算式に組み込めないので、計算できる形にします。今回は11%なので以下のようになります。
11%×0.01=0.11
続いて、この出来上がった数値を1から引きます。
1-0.11=0.89
また塩以外の分量は全て合計しておいてください。今回は以下のようになります。
2200g+1000g+1000g+740g=4940g
ここからまず塩も含めた全体の分量を求めます。
4940g÷0.89=5550.56…g
割り切れないので、小数点以下は切り捨ててください。また下一桁は四捨五入して5550gで計算します。そして塩の分量のみを求めばいいので、
5550g−4940g=610g
となります。この製法の分量では麴の育成を抑えるため、少し多目の620gを使用してあります。
材料から作った場合の塩の分量を算出する公式
これを公式化すると、計算で必要な分量の詳細と、作りたい塩分濃度は次のようになります。
- 茹で上がった大豆の重さ ⇒ [A]g
- 米麹の重さ ⇒ [B]g
- 麦麴の重さ ⇒ [C]g
- 種水 ⇒ [D]g (分量はccで表記してありますが、そのままgとして考えて大丈夫です)
- 塩分の設定濃度 ⇒ [E]%
この文字を使って表現すると次のようになります。
(A+B+C+D)÷(1−E×0.01)−(A+B+C+D)=必要な塩の分量
ここに必要な数値を入れていけば求まります。割合の計算なのでやはり難しく見えますね。
ただ減塩をすることによって味は変わります。極度の減塩は風味を損ないますので、最低でも8~9%に抑えることをオススメします。
また減塩をすることによって塩切り麹の効果も薄まる可能性があります。熟成中の発酵の進み方、カビの生えやすさにも影響があり得るので、慣れないうちは設定分量で作成することをオススメします。