失敗しない!豆味噌(赤味噌・八丁味噌)の上手な作り方
味噌汁などでよく使う味噌ですが、その味噌にはいろいろな種類があります。味によって味噌は様々な使い方をします。甘口の味噌もあれば辛口の味噌とそのバリエーションは多々あります。
今回はその中でも豆味噌(赤味噌・八町味噌)の上手な作り方について紹介していきたいと思います。
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豆味噌(赤味噌・八丁味噌)とは
まずは豆味噌の分類と基礎知識をつけていきましょう。
味噌は大きく分けて米味噌、麦味噌、豆味噌、調合味噌の4種類に分類することができます。今回ご紹介するのはこの4種の中の1つである豆味噌です。
こちらは米麹や麦麹を用いず、原材大豆の全てを麹にした豆麹で作られる味噌です。全国的に豆味噌は塩辛いというイメージがありますが、塩分は少ないです。
名古屋圏では”味噌汁”と言えばこの味噌を使い、赤褐色の味噌であることから「赤味噌」とも呼ばれ、米味噌を使った味噌汁を”白味噌汁”と言って区別しています。
岡崎市の矢作川地域で収穫される矢作大豆と、知多の成岩や饗庭で作られる塩を用いて、八丁村で作られていたことから「八丁味噌」とも呼ばれます。
豆麴のみを使った豆味噌(赤味噌)の作り方
名古屋圏ではない方はあまり馴染みのない味噌かもしれませんが、この豆味噌、なかなか美味しいです。もちろん市販品でも美味しいですが、この豆味噌に馴染みのない方は是非自家製で豆味噌を作ってみてはいかがでしょうか。
ここからはこの豆味噌の、豆麴のみを使い工程も少ない作り方をご説明していきます。今回は簡単で失敗しにくい豆味噌の作り方になりますので、初めての方も作ったことがある方も是非参考にしてください。
豆麹のみで作る豆味噌(赤味噌)に必要な材料・道具
ではまず必要な材料や道具について説明していきます。分量も一緒に載せていますので、参考にしてください。道具の[ ]はあれば準備できるといいですが、推奨ではありません。
材料
- 豆麴 4kg
- 塩 740g
- 焼酎(またはホワイトリカー) 少量
- 種水(一度沸騰させて冷ました水) 1.4kg
道具
- すり鉢 [フードプロセッサー又は電動ミンチ機]
- プラスチックのたらい [大きなステンレスボウル]
- チャック付ビニール袋 [プラスチック樽(内蓋付き)と重石1.5kg]
- 霧吹き
- 落とし布またはラップ
以上を準備してください。塩分濃度は12%になるように準備しています。塩分濃度の計算方法は後程ご説明します。ただこの作り方では食塩と水で作る食塩水の分量が肝となるので出来るだけ分量は変えないでください。
道具でプラスチック樽を使う方は塩蓋用の塩も準備するといいです。仕込んだ味噌と内蓋の間に入れます。詳しくは手順にて説明します。
豆麹のみで作る豆味噌(赤味噌)の手順
先ほど簡単で失敗しにくい味噌作りをご説明しますと言いましたが、どの味噌を作るにしても熟成するまでに時間だけはかかることはご了承いただきたいと思います。
豆麴のみで作る豆味噌作りは、簡単に説明すると以下の3工程だけです。非常に簡単です。
- 下準備
- 仕込み味噌を作る
- 味噌を仕込む
それでは、手順ごとに詳しく説明してきます。
下準備
- たらい、またはボウルに食塩水を作ります。まず水から容器に入れてください。水の温度は常温でかまいません。その後塩を加えて、塩が溶けるまでかき回してください(食塩の沈殿がなくなる程度)。
- 食塩水に豆麴を入れ馴染ませます。豆麴を1つ摘み、塩味が効いていれば大丈夫です。この状態でも美味しいです。
- 馴染ませたら、チャック付きのビニール袋に一度入れかえ2~3日放置します。空気抜きや重石は必要ありませんが、蓋を閉め水を吸って柔らかくなるようにします。
食塩水を作る工程で、食塩が完全に溶けきらないと思います。それは食塩水の飽和濃度(物質が溶ける事の出来る限界の量)を超える食塩を混ぜているからです。
しかしこの製法の豆味噌には、その量の食塩が必要になります。食塩が残っても豆麴に馴染ませてください。大豆の浸透圧の関係でそのような食塩もしっかり馴染みます。
仕込み味噌を作る
- 水を吸って柔らかくなった豆麴をすり鉢に移しすり潰します。こうすることで味噌と同じような状態で熟成でき、豆麴の隙間をなくしきっちり密閉できます。
豆麴は柔らかく、隙間無く固めに仕込むのが豆味噌作りの失敗しないコツです!
味噌を仕込む
- 焼酎などのアルコールを霧吹きに入れ、チャック付きビニール袋に吹きかけ殺菌します。
- 消毒した容器に味噌を仕込みます。隙間無くするために拳で上から押して空気を抜きながら仕込んでください。
- 仕込が終わったらあとは空気を抜き、チャックをしっかりと閉め保管します。
プラスチック樽を使う場合も、中に漬物用のビニール袋を敷いて、袋の中をアルコール除菌をしてください。仕込み味噌はそのビニール袋の中に入れます。
上記と同じように、中に味噌を詰め終わったら空気を抜きながら袋の口を閉め、その袋の上に、塩蓋用の塩を入れた袋を乗せます。内蓋で樽の蓋をして重石を乗せたら完成です。
この製法ではおよそ6kgの味噌が出来ます。そのため重石は20~30%が目安なので、1.2~1.8kgとなります。準備する道具ではその間の1.5kgで紹介させていただきました。
隙間を作らないのも、空気を入れないのも、アルコール除菌も基本的には雑菌やカビの防止の為です。このあたりの工程は特に気を付けてやるのが、失敗しないためのコツです。
豆麴、米麴を使った豆味噌(赤味噌)の作り方
豆麴、米麴を使ったカビが生えにくい豆味噌の作り方もあります。
こちらは、先ほど紹介した豆麹のみで作る豆味噌よりも作り方は若干複雑となりますが、カビが生えにくく管理も簡単ですので、「簡単に手作りする」事よりも、「簡単に熟成管理したい」という人はこちらの方法で作るのがおすすめです。
豆麴、米麴を使った豆味噌(赤味噌)に必要な材料・道具
豆麹のみで作る豆味噌作りと同じように必要な材料や道具について説明していきます。分量も一緒に載せていますので、参考にしてください。道具の[ ]はあれば準備できるといいですが、推奨ではありません。
材料
- 大豆 2.6kg
- 乾燥米麹 500g
- 乾燥豆麴 1kg
- 塩 1kg
- みりん 100~150cc
- 焼酎(またはホワイトリカー) 少量
道具
- 大きめの鍋(大豆容積の2.5倍以上) [圧力鍋(容積は鍋に同じ)]
- ザル
- ビニール袋 [フードプロセッサー又は電動ミンチ機]
- 輪ゴム(ビニール袋で行う場合)
- プラスチックのたらい [大きなステンレスボウル]
- プラスチック樽(内蓋付き)と重石3.5kg
- 霧吹き
以上を準備してください。塩分濃度は11%になるように準備しています。
豆麴、米麴を使った豆味噌(赤味噌)作りの手順
豆麹と米麹を使った豆味噌作りは、以下の5工程です。
- 下準備
- 大豆を煮る
- 塩きり麹を作る
- 仕込み味噌を作る
- 味噌を仕込む
それでは、手順ごとに詳しく説明してきます。
下準備
- 大豆をよく洗い、たっぷりの水に浸けます。時間は10~12時間を目安に浸けてください。容積は初期の大豆の2.5倍程度まで膨らみます。
大豆を煮る
- 水を含んで膨らんだ大豆を鍋に移し、たっぷりの水を入れ煮立てます。沸騰したら弱火でコトコトと柔らかくなるまで煮ます。
- 柔らかくなるまでに2時間以上を要します。あくが出てきますので、吹きこぼれ防止のためにも取り除いてください。親指と人差し指で大豆を縦につまんで押しつぶれるくらいまで煮てください。割れ目から2つに割れるのはまだ煮方が不足しています。
- 煮えた大豆をザルにあげ、40℃くらいまで冷まします。
- 冷ました大豆をビニール袋に入れ、輪ゴムでしっかり蓋をして足で踏んですり潰します。フードプロセッサーなどがある方は楽にすり潰せます。また道具でご紹介はしてませんが、すり鉢で潰しても大丈夫です。
圧力鍋を使用する場合は重りが動いてから15分、火を止めて15分煮ればいいので、非常に早く煮ることができます。
塩切り麹を作る
- 分量を量った塩と乾燥豆麴、乾燥米麹をたらいやボールの中で合わせます。この時塩は1kg中の900gを使用します。100gは残しておいてください。
- まんべんなく混ざるまで、しっかりと手で混ぜ合わせます。
麹に塩をまぶすことによって麹の水分活性を下げ、麹菌自体の発育を抑えます。発育を抑えられた麹菌は自己融解を起こし、味噌を美味しくするための酵素を出すようになります。
塩切り麹は大豆を冷ましている間に作るとスムーズに工程を進められます。
仕込み味噌を作る
- すり潰した大豆と塩切り麹をよく混ぜます。結構力が要るので、しっかりと混ぜ合わせてください。
- よく混ざったら、押し固めます。
- 押し固めたら掌よりも少し大きいくらいの味噌団子を作っていきます。団子には空気が入らないようにしてください。この時、できた団子を2つに割って、パカッと割れれば良い固さです。
大豆は柔らかく煮て、固めに仕込むのが米味噌作りの失敗しないコツです!
味噌を仕込む
- プラスチック樽の中には漬物用のビニール袋を敷いて、袋の中を消毒します。焼酎などを霧吹きに入れ、容器内に吹きかけ消毒してください。ただし大量に吹きかけないようにしてください。あくまでも少量でいいです。
- 味噌団子を袋の中に1つずつ入れていきます。団子は1つ入れるたびに、げんこつで上から押し込み、団子の間の隙間をしっかり埋めていきます。
- きれいに平らに馴らしたら、とっておいた塩100gを表面にまぶします。
- その上にみりんをかけます。塩とみりんがシャーベット状になり、表面全体を覆えば大丈夫です。
- 詰め終わったら内蓋をして重石を乗せます。
隙間を作らないのも、空気を入れないのも、アルコール除菌も基本的には雑菌やカビの防止の為です。このあたりの工程は特に気を付けてやるのが、失敗しないためのコツです。
豆味噌(赤味噌)作りで失敗しないコツ!
美味しい豆味噌を作るには、そもそも以下のポイントを守って味噌作りをすることが大切となります。失敗しないために覚えておきたいコツを紹介しておきます。
豆麹のみで作る豆味噌(赤味噌)作りの場合
- 豆麹は早めに使用する
- 豆麴に水分をたっぷり吸わせる
- 食塩を豆麴に馴染ませたら必ず味見をする
- 豆麴をすり潰すときは丹精こめて
- 保管する容器には仕込んだ日時を記入しておくと良い
豆麹と米麹で作る豆味噌(赤味噌)作りの場合
- 米麹、豆麴は早めに使用する
- 大豆の手洗いは丁寧に行う
- 大豆に水分をたっぷり吸わせる
- 大豆を煮る時は3倍以上の水を使う
- 親指と小指で潰せるくらい柔らかく煮る
- 混ぜるのは大豆が冷めてから
- 材料を混ぜる時は心を込めて混ぜる
また、上述したポイント以外にも、「作成時期・熟成期間・保管方法」もしっかりと覚えて豆味噌作りをすれば、より一層美味しい豆味噌が作れます。
ピントルの味噌専門ページでは、初めて手作り味噌に挑戦するという方のために、味噌作りの全てを記したページもご用意しております。つくりたい味噌の味わいに合わせた材料の分量から、初めての味噌作りにおすすめな道具のセットまでご紹介していますので、味噌作りに挑戦する方は是非確認してください。
豆味噌(赤味噌)作りに適した時期
まず作成時期ですが、どちらの製法でも雑菌の繁殖も考えると1月~2月あたりの寒いくらいの時期がオススメです。
豆味噌(赤味噌)の熟成期間
「豆麹のみの豆味噌作り」は熟成期間が長いのが玉に瑕です。豆味噌は通常の製法でも1年は熟成します。ただこの製法では2年を目安に熟成させます。食べられるのはかなり先になります。
ただ通常の豆味噌の製法と同じように1年での熟成でも美味しくいただけます。ただ2年じっくり熟成させるとより美味しくいただけます。
「豆麹と米麹で作る豆味噌作り」は通常の製法と同じで1年で熟成させます。
熟成期間中は、まめに様子を見てください。チャック付きのビニール袋の場合は熟成中発酵が活発になった場合、袋が膨れてくる場合があります。まめに空気抜きをしてください。
豆味噌(赤味噌)の保存方法と保管場所
保管方法、保存方法はどちらの製法でも共通となります。
熟成期間中の保存場所は温度が高めで湿度が低く、直射日光を避けた風通しの良い場所に保管してください。15℃以下では熟成が進みにくくなります。理想品温は27℃ですが、手作り味噌はリビングなど室温も高めで変化の目が届きやすい場所が最適です。
熟成が終わり、味噌が完成したら味噌を上下によく混ぜます。必要な分をタッパーなどに入れ、ラップやビニールシートを密着させ空気に触れないようにし、冷蔵庫や冷暗所に保存してください。
手作り豆味噌にカビが生えてしまった場合
空気などをしっかり抜き、消毒をしてあればなかなかないですが、万が一カビが生えたとしても失敗ではありません。
カビを取り除き、再度アルコール殺菌を行い、空気を抜いて蓋を閉めてください。特に高温多湿になる時期はカビが発生する可能性があります。まめにチェックを行ってください。
豆味噌(赤味噌)の塩分濃度の調整方法
ここからは分量の調整です。このような計算が苦手と言う方も見えると思うので、公式化したものを掲載しておきます。今回の分量を元に例も掲載しますので、参考にしてください。
その場合、必ず必要な道具があります。
- 量り(電子天秤などでもいいですが重くても量れるもの)
- 計算機
暗算が得意なら計算機はいりませんが、あった方が間違いがありません。
計算方法
まずは実際の数値で具体的に見た方が分かりやすいと思うので、豆麹のみで作る豆味噌作りの作成分量を元に説明します。
- 豆麴 ⇒ 4000g (=4kg)
- 種水 ⇒ 1400g (分量はccで表記してありますが、そのままgとして考えて大丈夫です)
- 塩分の設定濃度 ⇒ 12%
この分量で考えられています。
最初にパーセントはそのまま計算式に組み込めないので、計算できる形にします。今回は12%なので以下のようになります。
12%×0.01=0.12
続いて、この出来上がった数値を1から引きます。
1-0.125=0.88
また塩以外の分量は全て合計しておいてください。今回は以下のようになります。
4000g+1400g=5400g
ここからまず塩も含めた全体の分量を求めます。
5400g÷0.88=6136.36…g
割り切れないので、小数点以下は切り捨ててください。また下一桁は四捨五入して6140gで計算します。そして塩の分量のみを求めばいいので、
6140g−5400g=740g
となります。
塩の分量を算出する公式
これを公式化すると、計算で必要な分量の詳細と、作りたい塩分濃度は次のようになります。
- 豆麴 ⇒ [A]g
- 種水 ⇒ [B]g
- 塩分の設定濃度 ⇒ [C]%
この文字を使って表現すると次のようになります。
(A+B)÷(1−C×0.01)−(A+B)=必要な塩の分量
ここに必要な数値を入れていけば求まります。割合の計算なのでやはり難しく見えますね。
豆麹と米麹を使った豆味噌作りの場合、公式化するのであれば次のようになります。
- 茹で上がった大豆の重さ ⇒ [A]g
- 米麹の重さ ⇒ [B]g
- 豆麴の重さ ⇒ [C]g
- みりん ⇒ [D]g (分量はccで表記してありますが、そのままgとして考えて大丈夫です)
- 塩分の設定濃度 ⇒ [E]%
この文字を使って表現すると次のようになります。
(A+B+C+D)÷(1−E×0.01)−(A+B+C+D)=必要な塩の分量
ただ食塩の分量を調節することによって様々な影響を与えます。熟成中の発酵の進み方、カビの生えやすさにも影響があり得るので、慣れないうちは設定分量で作成することをオススメします。