いつが食べごろ?手作り味噌の発酵と熟成
手作り味噌を作る過程で美味しく食べるための最後のポイントが発酵・熟成となります。これはただ放っとけばいいというわけではありません。
やはり発酵・熟成の時こそ手間暇かける必要があるのですが、気を付けるべきポイントをしっかり押さえておくといいです。今回は発酵・熟成の基本知識やポイントやご紹介していきます。
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手作り味噌はいつが食べごろ?
手作り味噌は冬の時期に仕込む方が多いと思います。その場合、ひと夏超えた時期くらいからが手作り味噌の食べごろといえるでしょう。
1月(気温4℃)から8月(気温30℃)にかけてゆっくりと発酵し、夏のピークで味噌は最も発酵が進みます。そこから徐々に気温が下がってくると味噌の味がのってくるため美味しく食べることができます。
発酵・熟成しすぎた味噌の活用法
発酵熟成しすぎるとその味噌は使えないのでしょうか。いえいえそんなことはありません。だから捨てるのはちょっと待ってください。
以下の調理をすると美味しくいただけます。
- 味噌に酒・みりん・少量の砂糖を加えて鍋にかけゆっくり伸ばしながら煮る。ぐつぐつとなるまで火を通す。
- 火を止めて常温まで冷ましたら、魚や肉などを漬け込む。2,3日経った頃が食べ頃になる。
発酵熟成した状態は水分が全くなくなっている状態なので風味が落ちます。その水分や風味を酒やみりんで補い、少し砂糖で甘味を加えることで美味しくいただけます。
手作り味噌の発酵について
それでは、味噌の発酵・熟成の基本的な知識を付けていきましょう。発酵が起こっている過程は目には見えませんが、熟成度合いは目で確認することができます。
だからこそ目に見えない発酵についてはしっかりと知識をつけておいていただきたいと思います。
味噌が発酵する仕組み
そもそも味噌の発酵にはその材料である麹が関わっています。
麹には麹菌が含まれています。そもそも麹菌は「コウジカビ」というカビの一種ですが、身体に害はありません。
なぜならコウジカビは塩切り麹を作った時点で死滅してしまっているからです。厳密にはこのコウジカビから出る酵素が発酵に関わります。
このコウジカビから出る酵素はデンプンを糖分に変え、たんぱく質を分解する働きを持ちます。つまり発酵とはこの酵素が味噌の主成分である大豆や米のたんぱく質、脂質、炭水化物を分解しているのです。
中学の理科で習うことですが、それぞれの物質は以下のように変化します。
- たんぱく質 ⇒ アミノ酸
- 炭水化物(デンプン) ⇒ 糖質
- 脂質 ⇒ 脂肪酸
ここで味噌の味の違いが説明できます。白味噌は赤味噌より甘みが強いと言われています。
白味噌はその生成に米麹を使います。米はもともとデンプン質であるため分解されれば上述の通り糖質が多くなります。よって完成した味噌の味は甘めに仕上がるわけです。
また糖質は空気中や麹についた酵母や乳酸菌を集めます。乳酸菌は酸を作り、味を引き締めるとともに、雑菌の繁殖を抑える効果があります。酵母も味噌の香りや風味を作ります。
どの味噌にも使われる大豆は「畑の肉」と呼ばれるようにたんぱく質を多く含みます。たんぱく質はアミノ酸に分解されますが、アミノ酸は味噌の旨味を作ります。
味噌が発酵する適温
ではこの酵素はどんな状況でも働くのかと言われれば、そういうわけではありません。酵素にはそれぞれ働くのに適した温度があります。
ここで1つ例を挙げて説明しましょう。実は身近にも酵素があります。それは唾液に含まれる酵素です。この酵素はアミラーゼと呼ばれます。
どこかで聞いたことがあるのではないでしょうか。これも実は中学で習います。アミラーゼは人間の正常な体温でよく活動するため、その適正温度は35~37℃と言われています。
つまり麹菌に含まれる酵素もその適正温度が存在します。その温度は20~25℃と言われています。つまり常温と同じくらいで、ちょうど人が生活するのに適した温度でもあるわけですね。
味噌を作る過程で大豆を炊き込みますが、麹菌を混ぜるのは冷ました後の大豆でないとダメと説明されます。その理由はこの酵素の働きに大きく影響するためだったわけです。
ちなみに説明の中で例に出させていただいた「アミラーゼ」ですが、中学2年生のお子様が見える方は話してあげてみてください。秋口あたりならばもう習っているはずですよ。
手作り味噌の熟成について
さてこれで味噌は美味しくなるため酵素によって発酵します。そのあとは熟成になります。こちらは目に見える変化や特徴があるで、適正温度や期間を説明させていただきます。
味噌が熟成する際の適正温度
まずは発酵に続き、熟成の温度ですが同様に20~30℃が良いと言われています。熟成にもやはり酵母は必要となります。そこから全体を通して発酵・熟成には27℃くらいが適温となっています。
味噌の熟成期間
では熟成の期間はどうでしょうか。これは色合いや風味などの特徴を一緒に見ていこうと思います。熟成の期間区分は以下の形で見ていきたいと思います。
- 仕込みをした直後
- 仕込んでから3カ月
- 仕込んでから10カ月
- 仕込んでから2年以上
この期間で大きく特徴が変わってきます。ひとつひとつ見ていきましょう。
仕込みをした直後の味噌の特徴
仕込んだ直後は煮込んだ大豆に塩と麹を混ぜただけの状態なので、味噌と呼ぶには程遠い形になっています。特徴をまとめると以下の通りです。
- 色合いは大豆の煮た状態のまま
- 風味は塩味が強く、食べるととても塩辛い
- 香りは大豆の香りのみ
- 固さはパサパサで麹の粒々が残っている
どう見ても食べるのには適していません。発酵も進んでいないため、美味しく食べられるようになるまで気長に待ちましょう。
仕込んでから3カ月経過した味噌の特徴
最も短い期間の熟成になりますが、まずは特徴を見てみましょう。
- 色合いは着色現象が若干みられる(仕込み直後より茶色が強くなる)
- 風味は熟成味が少し感じられるようになるが、塩辛さは強い
- 香りは味噌の香りがするが、まだ未熟臭が強い
- 固さは仕込み直後よりはやや軟化するが、まだパサつきが残る
全体的にはこのような特徴になります。仕込んだ時期よりは味噌らしくなりますが、まだまだ美味しいとは言えないでしょう。
ちなみにこの味噌の特徴は冬仕込みの春時期を3カ月過ごした味噌の特徴を表しています。
春時期の3カ月と夏時期の3カ月のどちらを過ごしたかで多少熟成が変わります。夏時期の方が熟成が進むので、この状態よりももう少し味噌らしくなります。
仕込んでから10ヶ月経過した味噌の特徴
続いて10カ月のものです。これくらいになると味噌としてもいい時期に入ってきます。
- 色合いは濃い茶色になり、味噌に照りや冴えが見られる
- 風味は大豆の旨味と麹の甘みが一番良い
- 香りは味噌特有の発酵臭とほのかなアルコール臭がする
- 固さは味噌の半固体のような滑らかさがある
市販のものとほとんど変わらない見た目になるでしょう。麹と大豆は軟化しているため粒々感もありません。
仕込んでから2年以上経過した味噌の特徴
ここまでくると個性的な風味が出てきます。ここは好みによってはっきりと分かれる傾向がありますが、こんな特徴が出てきます。
- 色合いは着色現象が進み、焦げ茶系や黒い色合いになる
- 風味は長期熟成により米の甘味が減り、代わりに乳酸発酵による酸味が出てくる
- 香りは10カ月の時に比べ味噌の香りが強くなる。またアルコール臭も味噌の状態によっては強くなる
- 固さは10カ月のときと大きく変化しない
なかなか癖の強い味噌になりますが、これが好きと言う人もいます。そのような方は2年以上熟成するといいでしょう。
以上から最も熟成期間として適しているのは10~12カ月時に食べるといいということが分かります。
手作り味噌の上手な作り方
ピントルの味噌専門ページでは、基本的な手作り味噌の方法以外にも、味噌の種類ごとに詳しい味噌作りの方法を紹介しています。
味噌作りのための分量の計算方法から、準備するべき道具、そして味噌作りの手順1つ1つを細かく丁寧に解説していますので、手作り味噌に挑戦しよう!という方は是非参考にしてください。