世界四大スピリッツ!ウォッカの原料や種類について
皆様は日々の生活の中でお酒は嗜まれるでしょうか?もし嗜まれるのであれば何を飲まれるのでしょうか?たいていの場合はビールや酎ハイといったものが日本の主流となるのでしょう。しかし海外ではその地域ごとに主流となるお酒が違います。
寒い地域である北欧や東欧では、アルコール度数が高いウォッカを主流としている国もあります。日本でもストレートやカクテルで飲まれるお酒ですが、これについて知られていることは意外にも少ないです。そこでこちらでは世界四大スピリッツの1つであるウォッカの原料や種類についてご紹介していきます。
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ウォッカとは?
ウォッカはロシアやウクライナ、エストニアといった東欧の国で主に製造されている蒸留酒です。旧ソ連圏の地域のほか、スウェーデンやノルウェーなどの北欧圏、ポーランドやスロヴァキアなどの中欧圏でも製造されています。
その名称の表記は多岐にわたり、「ヴォトカ」、「ウォトカ」、「ウォツカ」、「ウオッカ」とも表記されます。ちなみに日本での名称「ウォッカ」については、日本で慣用とされており、原語発音に近いヴォトカやウォトカ、またはウォツカに修正される方向にあります。
このウォッカ(=vodka)の由来は、スラヴ語で「水」を意味する単語「voda」に指小辞を付けたものであり、「少量の水」と解釈されています。
ウォッカの製法は後述する原料を蒸留し、白樺の炭で濾過する方法を用います。そのためアルコールであるエタノールを除けばほぼ無味無臭無色で、その成分のほとんどが水とエタノールのみとなっているので、アルコール度数が40%前後の癖が少ない蒸留酒となっています。
ただウォッカには意図的に香味が付けられているフレーバード・ウォッカと呼ばれるものも存在し、こちらを好んで飲まれる方もいます。
ウォッカは日本の酒税法上ではスピリッツに分類されますが、世界的にもジンやラム酒、テキーラと合わせて世界四大スピリッツと称されています。
ウォッカ?テキーラ?四大スピリッツの違い
酒税法上ではという前置きをしましたが、改めて説明すると、スピリッツとは醸造酒を蒸留して作る蒸留酒のことを指します
具体的には、ビールやワインは水分が大半を占めるためアルコール度数が低いですが、それら醸造酒を火にかけてアルコールと水分の沸点の違いを利用して蒸留し、アルコール度数を高めたものがスピリッツになると言うことです。
もちろん製造工程はもっと複雑ですが、蒸留酒がどのようなものなのかは、こうイメージしていただくといいでしょう。蒸留酒は各国に独自のものが存在するほど種類がありますが、その中でも先ほども触れたように、ウォッカ、ジン、ラム酒、テキーラは四大スピリッツとして有名な蒸留酒になります。
この4つの違いは、その生まれた地域と原材料などにあります。ウォッカについては先ほどご紹介させていただきましたが、簡単にまとめておきましょう。
- ウォッカ
生産地:ロシア・ウクライナ・エストニア(東欧圏)、スウェーデン・ノルウェー(北欧圏)、ポーランド・スロヴァキア(中央圏)
原材料:大麦・小麦・ライ麦・ジャガイモなどの穀物
製法:原材料を酵母でアルコール発酵させて蒸留後、白樺の炭で濾過 - ジン
生産地:イギリス・オランダ・ドイツ
原材料:大麦・小麦・ライ麦・ジャガイモなどの穀物
製法:原材料を酵母でアルコール発酵させて蒸留後、ジュニパーベリーなどのボタニカルで香り付け - ラム酒
生産地:西インド諸島
原材料:サトウキビの廃糖蜜または搾り汁
製法:原材料を酵母でアルコール発酵させてエタノールに変えた後、蒸留 - テキーラ
生産地:メキシコ
原材料:竜舌蘭(アガベ・テキラナ・ウェベル・バリエダ・アスル)
製法:原材料から出る樹液を酵母により発酵させてエタノールに変えた後、蒸留
ご覧の通り、例えばウォッカとジンは原材料こそ同じな物の、製法に違いがあります。またラム酒やテキーラは原材料そのものに違いがあります。当然のことながら生産地はそれぞれ違い、同じスピリッツと呼ばれるものでも、これだけの違いがあります。
それもあって、どれもその風味や飲み方に違いがあり、純度が高い蒸留酒として世界で愛されているため、「四大」と称されているのです。
ウォッカの原料
それではウォッカの原料について少し詳しく見ていきましょう。基本的に使う穀物については先ほどもご紹介させていただいた通りですが、フレーバード・ウォッカを作る際、材料が追加されることがあります。そのあたりも含めて見てみましょう。
穀物
ウォッカに使われる穀物には以下の材料が含まれます。
- ライ麦
- グレーン
- 小麦
- 大麦
先述したように、同じ四大スピリッツであるジンと原材料はほとんど変わりません。ちなみにグレーンはとうもろこしなどの穀類をさしています。
穀物以外
穀物意外だと以下の材料が使われていることがあります。
- ミルク
- フルーツ
- じゃがいも
- ビート
- モラゼス
- フレーバード
先述通り、ウォッカはアルコールの成分を除けば無味無臭無色透明であるためカクテルのベースにされることが多いスピリッツです。穀物などから出来ていることから、とりわけ果実の香りとの相性は非常に良いとされており、現在有名なカクテルの多くが、この特性を生かして作られています。
特に中欧圏に当たるポーランドを中心として、カクテルではなくウォッカそのものに上記のような果実やハーブを漬け込んで作るものや人工香料を添加して作るものと様々な種類のものが存在しています。
例えば、レモンの風味が特徴的な「リモンナヤ」や、世界遺産・ビアウォヴィエジャの森に自生するバイソングラスと呼ばれるハーブを漬け込みや、桜のような柔らかく甘い香りが特徴の「ズブロッカ」などがあります。
ウォッカの歴史
そんなウォッカにも当然ですが歴史があります。ただ、ウォッカは現在でも広い地域で作られており、その歴史は大きく分けると、ロシアとポーランドの歴史に二分されるため、両方の視点から歴史をご紹介していきます。
ロシアのウォッカの歴史
ロシアでのウォッカの起源には諸説あります。例えば最古のものであれば12世紀頃からロシアの地酒を元に作られるようになったというものです。しかしこれは歴史的に正確な記録などもなく伝承的な説になっています。
またルーシ時代の果実酒が元になったという説もあります。いずれにしても古くからあるお酒であり、これが世に紹介されるようになったのは14世紀終盤の1386年だったと言われています。
この時代はドミトリー・ドンスコイ大公の治世であり、ジェノアの大使によってブドウを原料にした「命の水」と呼ばれる蒸留酒が初めて紹介されたのがきっかけとされています。
この頃、イギリスやアイルランドにもこの「命の水」は伝わり、後のウィスキーとなりました。この命の「水」がスラブ語でvodaであることからvodkaとなった説が語源の1つとして挙がります。
この「命の水」は伝わった場所によってその姿を変え、フランスではブランデー、スカンジナヴィアではアクアビット、そして15世紀半ばのロシアではライ麦を原料としたジーズネンナヤ・ヴァダーと呼ばれる蒸留酒になりました。これを略したヴォダーもウォッカの語源の1つとして考えられています。
製造され始めた当初こそ、現在のウォッカとは似ても似つかぬものでしたが、18世紀になるとその種類や技術の高まりにより、西欧圏でも評価を得るようになりました。やがて1794年には現在の製法である「白樺の活性炭で濾過する」という製法が確立され、それ以降、ウォッカは「癖の少ない酒」という個性を世に認められるようになりました。
ウォッカの銘柄の中でも特に有名と言われているのがスミノフ(スミルノフ)ですが、1917年のロシア革命の折、その社長であったウラジミール・スミルノフがフランスへ亡命後、パリでロシア国外初のウォッカ製造を開始、その工場に1933年同じくロシアからアメリカへ亡命していたルドルフ・クネットが訪れ、アメリカおよびカナダにおけるスミルノフウォッカの製造権及び商標権を購入して帰国しました。
これによりアメリカ産ウォッカの製造が始まって、アメリカが世界屈指のウォッカ消費国になったことで、ウォッカは世界中に広がると共に、スミノフはウォッカの中でも有名な銘柄の1つとして名を連ねることとなったのです。
しかしロシア革命後のソビエト連邦建国後、経済の停滞と言論の不自由への不満から国民の多くがウォッカ中毒に陥り、重く見たミハイル・ゴルバチョフはペレストロイカの一環としてウォッカの製造を削減しています。
それでも国民はウォッカを求め、自宅での密造をしてしまったほか、貴重な税収であった酒税が減少してしまったことにより、さらに財政は悪化する一途を辿っています。それほどロシアではウォッカがメジャーであり、一国を傾かせるほどの影響力があることが伺えます。
ポーランドのウォッカの歴史
一方ポーランドでは、蒸留酒は中世前期に交易などを通してアラビアからヨーロッパ各地に伝わったものだと考察されています。そのためウォッカという名称がどのようないきさつで用いられるようになったかは定かではありませんが、一説では中世盛期と推測されています。
これは中世後期初頭の1405年のサンドミェシュ市裁判所の公文書にてウォッカの記述が初めて文献に登場したためと言われています。当時こそ消毒剤のウォッカと飲用としてのゴシャウカと別々の名称で呼ばれていましたが、用途が違うだけで使用しているものは同じだったとされています。(ゴシャウカとは当時のポーランド語で焼けるようにからいお酒の意味)
これらをまとめてラテン語でアクア・ヴィテ(=aqua vitae「命の水」の意味)と呼ばれており、これが訛ってオコ・ヴィタ(=oko-wita)とも呼ばれていました。
やがてこれがポーランド語訳によりヴォーダ・ジチャ(=woda życia)から水の意味をもつヴォーダ(=woda)に指小形を付加し、ヴトゥカまたはヴォートゥカ(=wódka「ちっちゃな水ちゃん」の意味)の語が出来ました。これが現在のウォッカという名称の語源と考えられています。
元来のアクア・ヴィテ、つまりエタノールとその蒸留法はアラビアから持ち込まれたとされていますが、アラビアでは娯楽としてのこれらを飲む、すなわち飲酒という習慣はありませんでした。
元より消毒剤や体臭予防剤、皮膚感染症の予防や治療剤、気付け薬など医療使用を目的として広く定着しており、ポーランドでもこの習慣が一般的とされていました。その結果14世紀のヨーロッパ全土を震撼させた大ペスト禍の時、当時のポーランド及び、その勢力圏でのペストの流行は確認されていません。
これはエタノールを消毒剤として用いる習慣があったためであると考えられています。この習慣が今でも受け継がれているため、ウォッカよりもアルコール度数がはるかに高いスピリタスが薬品として使用されるか、水割りやカクテルのベースとして利用されています。
このように伝わったこともあり、ポーランドにて酒類の中でもウォッカは、飲酒用としてはメジャーなものではありませんでした。中世盛期から後期にかけてのヨーロッパでは温暖期が続き、それにより穀物やブドウの栽培が行われていたため、同国文化圏ではウォッカよりもビールやワインが主流となっていました。
しかし17世紀ごろからヨーロッパ全土が慣例化し、ブドウの栽培及びそれからできるワインの製造は荒廃の一途を辿ることとなったのです。一方で大麦は寒さに強いこともあり、生産は継続しビール文化は残りました。
18世紀終盤に第1次から第3次ポーランド分割によってポーランド文化圏の一部がロシア帝国の支配下に入りますが、19世紀を通じてウォッカの強い酒をストレートで常飲する習慣が広まっていきました。これは2004年まで続きましたが、現在のポーランドでは再びビーㇽが主流となったことでウォッカの国内出荷は年々減少しています。
しかしカクテルベースとしての輸出市場の伸びが好調となり、それを見越して生産者はボトルやパッケージデザインに工夫を施すようになります。その中でも一躍人気となったのはズブロッカであり、そのボトルデザインは洗練されたものとなっています。
ウォッカの銘柄
さて、ここまでスミルノフやズブロッカなど銘柄がいくつか出てきましたが、他にもウォッカの有名銘柄があります。こちらではその一部をまとめておきたいと思います。
銘柄 | 特徴 |
スミノフ (SMIRNOFF) |
超有名銘柄 使い方が万能 |
スカイウォッカ (SKYY) |
人気銘柄 非常に飲みやすい |
アブソルート (ABSOLUT) |
人気銘柄 なめらかな味わい 芳醇な香り |
ベルヴェデール (BELVEDARE) |
やわらかい口当たり バニラの香り |
グレイグース (GREY GOOSE) |
フランス産 最上級ウォッカ |
ズブロッカ (ZUBROWKA) |
フレーバードウォッカ 桜餅のような香り |
ストリチナヤ (STOLICHNAYA) |
やわらかい口当たり スパイシーな風味 |
ギルビー (GILBEY'S) |
有名銘柄 コスパの王様 良くも悪くもそこまで特徴はない |