4大スピリッツのひとつ!ジンの歴史や種類について
バーなどに行くと目にするジンですが、このお酒のことについて詳しくご存知な方はどれくらいみるのでしょうか?その味わいは深く、アルコール度数が高めなので好んで飲まれる方は多いですし、カクテルの材料としても使われるので、知らず知らずのうちに口にされてみえる方もみえるでしょうが、奥深くこのジンについてを語れる方は案外少ないです。
歴史やジンの種類など、実は調べ出すと様々な情報が出てきます。またその製法も知っている方は意外にも多くはありません。そこでこちらではジンの歴史や種類、特徴など基礎的な知識についてご紹介していきます。
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ジンとは?ウォッカとの違い
それではまずジンについてご紹介していきましょう。
ジンとは大麦やライ麦、ジャガイモなどを原料とした蒸留酒のことを言います。その歴史については後述しますが、元々はオランダで薬用酒として造られていたという歴史があります。蒸留される際にネズの実、つまりはジュニパーベリーや、ボタニカルと呼ばれる薬草成分を加えられて作られるのがジンの最大の特徴でもあります。ジンが持つ独特の鋭い切れ味や口内に広がる香りは、それら薬草成分由来のものと言われています。
名前の由来もこのジュニパーベリーから来ており、この名称が訛ってジュニエーブル、さらにはジュネーヴァと伝わる過程で名前が変化していき、英国風に縮めて現在の呼び名「ジン」になったという説があります。
それでも蒸留酒の中では比較的個性が強くない上、西ヨーロッパでは古くから知られているため、そのまま飲むのではなくかくてテルの材料として最も多く使われているものの1つです。日本では酒税法上ではスピリッツに分類されています。
スピリッツとは
スピリッツとは醸造酒を蒸留して作った酒のことを言います。基本的にはアルコール度数が高いものの、蒸留後に加水した場合でも蒸留酒とされるので、アルコール度数を大きく落とすことも可能となっています。
つまりどういう事かというと、皆様が飲むビールやワインなど、原料を酵母によりアルコール発酵させて作るのが醸造酒となるのですが、これらは2つの沸点が異なる液体を分離する蒸留をしていないため、水分を多分に含みアルコール度数は低くなります。
それらの醸造酒を火にかけて蒸留し、水分を分離させてアルコール度数を高めたものがスピリッツ(蒸留酒)となるわけです。世界各地に、地域に応じた様々な蒸留酒が存在しますが、その中でもジンを含めたウォッカ、テキータ、ラムの4種類は「世界4大スピリッツ」とも呼ばれており、カクテルの材料などで広く親しまれる蒸留酒となっています。
ちなみに日本の蒸留酒は皆さんもよく知る焼酎になります。現在はチューハイなどに使われる新式焼酎の甲類と、「魔王」や「佐藤」といった銘柄の本格焼酎に分類される乙類があります。
ジンとウォッカと違い
同じ4大スピリッツとして名高いジンとウォッカは、実は使用している原料は同じなのです。ではその違いとは何なのか、それは蒸留時の違いにあります。
ジンは蒸留後にジュニパーベリーで香り付けするのに対して、ウォッカは蒸留した原酒を白樺の炭によってさらに濾過を行っています。これによりさらに癖の少ない蒸留酒となります。
その名の由来も「生命の水」を意味するロシア語「ズィズネーニャ・ワダ」が縮まり、ワダからウォッカとなった経緯があります。まるで水のようにまろやかで癖が少ない飲み口が特徴であり、この蒸留後の濾過によってその飲み口が生まれていることが印象付けられています。
ジンの歴史
さて、ジンの大まかな特徴などが分かったところで、歴史についても触れておきましょう。
ジンは古くからある酒と言うこともあり、その歴史も古く発祥には諸説ありますが、その中でも11世紀頃にイタリアの修道士がジュニペーベリーを主体としたスピリッツを作っていた記録が現在では有力とされています発祥はどうであれ、先述したように、ジンが生まれたのはあくまで薬用酒としての意味合いが強く、この時はまだ一般化していませんでした。
一般化の流れ
一般に酒として認知されるようになったのは1660年にオランダのライデン大学の医学部教授フランシスクス・シルヴィウスが作った解熱・利尿用薬用酒ジュニエーヴェル・ワイン(またはジェネヴァ、イェネーヴァーなど)が起源とされ、普通に飲んでも美味しかったため一般化していったと言われています。
さらにその約30年後の1689年にはオランダの貴族であったオレンジ公ウイリアム(ウィリアム3世)がイングランド国王として迎えられた際、この酒もイギリスに持ち込まれ、人気を博すようになったとされています。呼び名が「ジン」になったのもこの頃だと言われています。
しかしそれまでは蒸留技術も高くなく、雑味などが多いジンが流通していましたが、19世紀半ばには連続式蒸留器が発明され、飛躍的に雑味が少なく度数の高いスピリッツが蒸留できるようになり、ジンの製法も大きく様変わりしました。
地に落ちた人気
一方歴史の中ではジンに悪い印象が付きまとった時期もあります。これより少し戻って産業革命期の前後、ロンドンなどの大都市は労働者が流入し、近郊にはスラム街が形成されるようになりました。これら労働者の多くは低所得者であり、彼らの間にはジン中毒とも言える現象が蔓延していました。
これにより健康的なビール通りと対比した、堕落し悪徳にまみれた「ジン横丁」といったイメージも描かれたほどです。ジンは価格が安いわりにアルコール度数が高く「労働者の酒」「不道徳な酒」というイメージが付きまとい、貴族や健全な者の飲む酒ではないとまで言われていたほどです。
カクテルがジンを救う
しかし、これも後の新しい蒸留器の開発や20世紀にはカクテルのベースとして使われるようになったことで上流階級の間でも一般的になり、名門貴族の出であるウィンストン・チャーチルなどはほとんどストレートに近い特注のエクストラ・ドライ・マティーニを愛飲していたなど、再び陽の目を見ることとなったのです。
日本での流通
日本で初めてジンが蒸留されたのは1789年のフランス革命戦争の時期だったと言われています。当時の日本はまだ江戸時代後期でしたが、この頃本国を失い補給線を絶たれた長崎出島のオランダ人のために、長崎奉行所の茂伝之進が1812年(文化9年)にオランダ人の協力を得てジンやブランデー、ビールを作ったのが始まりと言われています。
この記録は、当時カピタンであったヘンドリック・ドゥーフ著「日本回想録」にその経緯と、ネズの臭いが強すぎてあまりいい出来ではなかったという感想がともに記されています。
ジンの種類
ジンの歴史は古く、様々な経緯があって今の形があることが分かったわけですが、現在のジンはその製法によって4種類+αに分けることができます。
- ドライジン
- ジェネヴァ
- シュタインヘーガー
- オールド・トム・ジン
- スロージン
どのようなジンがあるのか、ここで簡単にですが特徴をご紹介しておきましょう。
ドライジン
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歴史の中でも触れた連続式蒸留器の誕生時に生まれ、現在の主流となっているのがこのドライジンです。アルコール度数の高いスピリッツを作り、そこにジュニパーベリーなどの副材料を加えて単式蒸留することで生まれます。
イギリスのロンドンが主産地であることから「ロンドン・ジン」や「イングリッシュ・ジン」などとも呼ばれています。
ジェネヴァ
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現在でもオランダで作られている、かつて生産されていた原型に近いジンです。その産地からオランダ・ジンとも呼ばれています。こちらは原料を糖化、醸造した液体に副材料を加えて、単式蒸留します。そのためドライジンより香味が濃厚で風味が強いコクのある味わいになるのが特徴的です。
シュタインヘーガー
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こちらは生のジュニパーベリーを発酵して作られる、ドイツ産のジンです。普段の香り付けではセイヨウネズを乾燥させたスパイスとしてのジュニパーベリーを使っているため、生のものを使ったシュタインヘーガーはドライジンよりも控えめな風味を持ちます。
オールド・トム・ジン
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ドライジンが作られるようになる以前、雑味を抑えるために砂糖を加えて作られていたジンです。カクテルのトム・コリンズの材料として使われるジンでもあります。
スロージン
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スロージンは「スピリッツではなくリキュールの一種」なので厳密にはジンの種類ではありません。ジンで使われるジュニパーベリーの代わりにスローベリーと呼ばれるスピノサスモモの果実を副材料として作られるアルコールであるため、リキュールの一種となっているのです。
それ以外の原料が同じでありことや名称にジンが入っていることから勘違いされがちですが、類似品ではあるもののジンの種類ではなくリキュールの種類なので気を付けてください。
ジンの原料
それではジンの原料や製造方法なども改めてまとめてこちらでおきましょう。まず原料については以下の作物が挙がります。
主原料
- とうもろこし
- 大麦
- ライ麦
- じゃがいも
副材料
- ジュニパーベリー(セイヨウネズの実)
種類によるジンの製造方法
製造方法については先ほども触れたように、ジンは4種類あり、それぞれ製造方法に違いがあります。それぞれの製造方法をまとめておきましょう。
ドライジンの製造方法
こちらは現在主流となっているジンなので、現在の製法をご紹介していきます。
- 連続式蒸留器で原料となる麦芽やとうもろこし、ライ麦などの穀物類を蒸留し、アルコール度数95%以上のグレーンスピリッツを製造する。
- 出来たグレーンスピリッツにジュニパーベリーなどのボタニカルと呼ばれる草根木皮を加えて、さらにポットスチルと呼ばれる単式蒸留器でゆっくり再蒸留する。
- 再蒸留方法は2種類あり、ボタニカルとグレーンスピリッツを24時間漬け込む「ステーピング」という方法と、ジン・ヘッドと呼ばれる上下が金網になった円筒を取り付けてボタニカルを詰め、上流によって立ち上がるグレーンスピリッツ上記と一緒に香料成分を効率よく抽出する方法があります。
ジェネヴァの製造方法
- 麦芽を多めに入れる形でとうもろここしやライ麦などの穀物類を混合し、糖化発酵させて醸造する。
- 出来た醸造酒を単式蒸留器で蒸留する。
- 蒸留液にジュニパーベリーなどの草根木皮を加え、再び蒸留する。
シュタインヘーガーの製造方法
- 生のジュニパーベリーを25℃で8~14日に渡り発酵させてから、単式蒸留器で蒸留し、ジェニパーベリーのスピリッツを製造する。
- 麦芽、とうもろこし、ライ麦などの穀物類から連続式蒸留器で高濃度のグレーンスピリッツを作る。
- 2つのスピリッツをブレンドして、再蒸留する。
オールド・トム・ジンの製造方法
こちらは基本的な製造方法がドライジンと同じであり、そこに砂糖を2%加えることで製造されます。
ジンの有名銘柄
さて、ジンについていろいろ知っていただけたと思いますが、現在では世界に数々のジンが販売されています。そのためジンには多種多様な銘柄が存在しています。その中には人気の銘柄もあるためここでは、おすすめの銘柄とその特徴を簡単にご紹介しておきます。気になる方は詳しい内容を記した関連ページがありますので、そちらもご覧ください。
銘柄 | 国名 | 特徴 |
タンカレー (Tanqueray) |
イギリス | 大人気銘柄 豊かで芳醇な香り ストレートでも美味しい |
ビーフィーター (BEEFEATER) |
イギリス | 超定番銘柄 爽やかな柑橘系 比較的カクテル向け |
ボンベイ (BOMBAY) |
イギリス | 人気定番銘柄 深い香りとコク ストレートでも美味しい |
ギルビー (GILBEY'S) |
イギリス | コスパが良い銘柄 爽やかな柑橘系の香り 比較的カクテル向け |
ウィルキンソン (WILKINSON) |
日本 | コスパが良い銘柄 柔らかい飲み心地と香り 比較的カクテル向け |
ゴードン (GORDON'S) |
イギリス | 世界的定番銘柄 豊かな香りと爽快感 ジントニックを生んだ銘柄 |
ブラックデス (Black Death) |
イギリス | ペスト病が名前の由来 まろやかな飲み口とあっさりした後味 比較的カクテル向け |
ボルス (Bols) |
オランダ | リキュール名門銘柄 ジュネヴァで有名 なめらかな口当たりと芳醇な香り |
ヘンドリックス (Hendrick's) |
イギリス | 世界的に評価された銘柄 フローラルな香りとなめらかな口当たり ロックやジントニック向け |
ロンドンヒル (London Hill) |
イギリス | 世界的人気銘柄 都会的でおしゃれなデザイン 爽やかで複雑な味わい |