ワインの歴史とワインの始まり
世界最古の文明といえばメソポタミア文明と言われていますが、ワイン醸造の歴史はそんなメソポタミア文明の頃から始まっており、酒類の中でも最古の部類として、多くの文明や宗教的な背景とともに成長してきた歴史があります。
いまでは”大人の”嗜好品として存在している酒(ワイン)ですが、もともとは日常的な水の代わりとなるものだったり、アルコールの低いブドウジュースのような飲み物だったり、ワインの歴史を紐解けば様々な面白さが発見できます。ではワインが生まれたその時まで遡り、一緒に勉強していきましょう。
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人類はワインを発明したのではなく発見した
多くのものは「人類が発明」することで歴史が始まりますが、ワインの場合は発明したというより自然界に出来ていたワインを発見したというのが適切です。
ブドウの原種自体はすでに300万年前頃から地上に繁茂しており、糖分をアルコールに分解する酵母はそれよりも古く数億年前から存在していたとされています。
つまり人類が登場するはるか以前からワインとなる要素はすべて揃っており、ブドウの木の実が地面に落ちて潰れ、天然の酵母にて発酵し、ワインとなるものを人類が発見したのです。
人類とワイン醸造の歴史:8000 B.C.
▲世界最古のワイン醸造所▲
酒類の中でも世界最古の部類に入るワイン、現在では”蜂蜜酒"が最も古いとされていますがブドウ酒であるワインも同様に歴史のある酒として知られています。
その歴史は紀元前8000年頃まで遡り、現在のグルジアがあるコーカサス山脈では遅くともこの頃からワインが飲まれていたと考えられており、アルメニアでは約6000年前のものとされる世界最古のワイン醸造所跡も見つかっています。
文献に残るワイン醸造の始まり:5000 B.C.
ワイン醸造の歴史に関する文献で最も古いものが、紀元前5000年頃の出来事をシュメール人が書いた古代バビロニアの英雄誌として知られる「ギルガメッシュ叙事詩」、ここには大洪水に備えて船を建造した時に、水夫に対してワインが振る舞われたと記録されています。
また、紀元前5000年頃の遺跡からワイン醸造に使われたと考えられる、果実の果汁を絞るための石臼が発見されており、ワイン醸造のための葡萄畑も見つかっています。
しかしメソポタミアは葡萄の栽培に適した土地ではなく、ワインの酸化も著しかったため水や蜂蜜を混ぜて飲んだという記録も残っています。
エジプト王朝とワイン醸造の始まり:4000 B.C.
紀元前5000年頃の古代オリエントといえば、外せないのがエジプト文明。エジプト王朝は紀元前4000年代の末期からワインが醸造されており、第一王朝の頃から壁画などにワインの圧搾機や保存用のツボが描かれています。
この時代にはワインの醸造方法以外にビールの醸造方法も伝わっており、比較的醸造が簡単だったビールを日常消費用の飲料とし、ワインを高級品として飲み分けていた記録も残っています。
ワイン文化と普及の歴史
古代オリエントで始まったワイン文化、これが西洋へと広まっていくことに大きく影響したのがフェニキア人であり、彼らの拠点とする現在のレバノンに位置する湾岸沿いは、ワイン生産の起源とも言える地域です。
数千年という年月をかけて、コーカサス山脈に自生した葡萄がワインとなり、それが地中海を東から西へと伝えられた、当時では「東からもたらされた貴重な産物」として扱われていたのです。
フェニキア人とワインの歴史:3000 B.C.
ワイン文化を西洋に広めたフェニキア人は「ワインの輸出」「ワインの普及」「ヴィティス・ヴィニフェラ種の葡萄の普及」というワインには欠かせない3点にたいして大きな影響を与えました。
世界で最初のワイン商人として、ワインを酸化から守るために松ヤニのシールをオリーブオイルでコーティングしていたり、ヴァンヤードと呼ばれるワイン生産組織を形成できる環境にも恵まれていたのです。
このフェニキア人によりワイン文化は古代ギリシャに伝わっていきます。
古代ギリシャとワインの歴史:2000 B.C.
ワイン醸造がギリシャへと伝わったのが紀元前2000年頃、現在のギリシャでワインを指す「κρασί」という言葉が”混合”を意味していることからもわかるように、当時のワインというのは糖度が高く、水割りの形で飲むことが一般的とされていました。
古代ギリシャでは盛んにワイン醸造が行われており、地中海全域へとワインを広めたのはギリシャ人の功績と言って過言ではありません、ローマ帝国の支配下でも修道院を用いて葡萄の栽培やワインの醸造が続けられました。
ローマ帝国とワインの歴史:600 B.C.
紀元前600年頃に南フランスのマルセイユ地方へと伝えられたワイン文化は、この時代に勢力を強めてきたローマ人によってヨーロッパ全域へと急速に普及していきます。
ローマの戦士たちは戦争で赴く道の傍らに、農作物の種を蒔きながら移動し、戦火の中でも食料の確保を怠らないという智恵を持ち、この行動が征服した地域へと新しい文明を定着させることにつながったと考えられています。
そこで活躍したジュリアス・シーザー(102 B.C.-44 A.D.)は、現在ワイン王国となったフランスへとワイン造りを伝えた道程だったともいえ、ブルゴーニュやシャンパーニュやローヌ河周辺の地域を征服したのがこのシーザーなのです。
現代的なワインの始まり:100 A.D.
ローマ帝国の拡大と主にガリアなどの内陸部にもワインは水割りの文化とともに伝わっていきました。この当時のワインというのはブドウの糖分のアルコール変化が少なく、果汁の濃縮とともに過剰なほど甘い味と成っていたため、現代の「アルコール度数を抑える水割り」というよりも「過剰な甘みを抑える水割り」として存在していました。
しかしローマ時代にはワインの醸造方法もかなりの進化を遂げたため、ワインに含まれる糖分をアルコールに転化する技術も進歩し、ストレートでのめる現代的なワインの基盤となったのがこの頃と言われています。
ワインはキリストの血:1000 A.D.
時代は西暦1000年頃、中世ヨーロッパとワインの歴史が切り離せないように、キリスト教の存在もまた切り離せません、ということはワインとキリスト教もまた切り離せない関係なのです。
この時代というのは、優れた文化や芸術がキリスト教のために捧げられており、神と人との社会が構築されていました、そんななかでワインは「キリストの血」と言われており、たいへん神聖で貴重なものだったのです。
この背景のおかげで教会や修道院はこぞって葡萄畑を開墾し、良質なワインの醸造方法が成長し、17世紀の末頃にもなると、瓶詰めされてコルク栓を使用したワインまで発明されたのです。
現在のワイン:2000 A.D
16世紀の大航海時代を経て、ワインはヨーロッパから世界全域へと広がりました。そして世界中で栽培されるようになった葡萄ですが、葡萄は地域性が強い植物なため、他国の葡萄を自国に植樹しても同様の実をつけるとは限りません。
それもあって国ごとの特色が強いワインが生まれることで、世界に様々な味わいを持つワインが生まれました。
現在世界中で栽培されている葡萄の約90%がワインに使用されています。紀元前3000年頃に登場したヴィティス・ヴィニフェラ種の葡萄は、現在栽培されているワイン用葡萄の約半分をしめています。